『呪術廻戦』五条悟が見た夢の主人公が夏油傑だった理由 「懐玉・玉折」が意味するもの

『呪術廻戦』懐玉・玉折の意味と五条がみた夢

 「懐玉」と「玉折」。どちらの言葉にも含まれる「玉」という漢字は、美しいものを意味する。片方は美しさ(才能)を内包した者、一方は美しさ(善意)が砕けてしまった者を描いたこの過去編は、第29話のラストで2018年の五条が居眠り中に見ていた“夢”だったことがわかる。それはオープニング映像でもすでに暗示されていて、カメラが眠る五条を捉えながらティルトダウンすると、“反対側”の世界では長い廊下を行くあてもなく歩く夏油の背中が映される。このショットから見るように、過去編が五条の夢でありつつも、その主人公が夏油であることを意味しているのだ。夏油の丸まった背中が、永遠に続く廊下を歩く比喩にも胸が痛くなる。もう答え合わせもできなくなった今、五条なりにかつて理解してあげられなかった親友の想いを夢の中で探していたのかもしれない。目が覚めた彼の目の下が普段より赤くなっていたことも、“目”の描写に心血注ぐMAPPAのことを考えると、“ただ赤い”だけには思いづらい。あのオープニング映像の始まりに落ちる一滴の雫は、夢を見ながら流した五条の涙だったのではないか。

 夏油の異変に気づくことも止めることもできなかった若き日の五条は、自分一人だけが強くなっても意味がないことを知った。灰原を亡くした七海建人のこぼした「もうあの人1人でよくないですか?」という愚痴が、改めて強い意味を持つ。五条が最強になっても、周りの術師は死ぬし、その「やってられねー感」みたいなものが本人を地の底に叩きつけるから酷であること。それを理解した五条だからこそ、教師として自分と同じくらい強く聡い仲間を作ることを指針にした。もう誰も置いていかない。かつて別れ、自らの手で殺めた親友のことを思い出した「懐玉・玉折」は、10月18日の五条の目覚めで幕を閉じる。それから偶然にも忌み数である“13日”後、その親友の姿をした“何か”と呪霊が計画した呪術テロの対処のために渋谷に向かうことになることを、彼はまだ知らない。

■放送情報
『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」
MBS/TBS系にて、毎週木曜23:56~放送
閑話(前編) 8月10日(木)放送
閑話(後編) 8月17日(木)放送
「渋谷事変」編:8月31日(木)〜放送
キャスト:中村悠一、櫻井孝宏、遠藤綾、永瀬アンナ、子安武人
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史、小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
オープニングテーマ:キタニタツヤ「青のすみか」(Sony Music Labels)
エンディングテーマ:崎山蒼志「燈」(Sony Music Labels)
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp

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