北川景子、『どうする家康』お市役は「勇気をもらった」 時代劇へのあふれる愛も明かす

「時代劇を絶滅させたくない」

――豊臣秀吉を演じるムロツヨシさんとは、お市が嫌悪感を剥き出しにするビンタのシーンが印象的です。

北川:あのシーンはお市の登場自体が久しぶりで、撮影現場でムロさんと会うのも久しぶりだったんです。お市は今までの関係性から彼に対して「触るな」とビンタをするけど、娘を持っていかれることに対しては逆らえない。従うことしかできない苦しさ、悔しさがありました。毅然とした態度でいたいという気持ちはありながら、でも自分は囚われてしまっていて、いずれこの人に子供を任せることになってしまうのも理解している。先の不安と自分はもっと上手く立ち回ることができなかったのだろうかという思いを、短いシーンで全て表現しなくてはいけませんでした。なので、あのシーンは難しかったです。秀吉とあんなに目が合ったのは初めてだったんじゃないかなと思います。秀吉はもしかしたらお市を見ていたのかもしれないですが、お市は見てもいないくらい軽んじていたというか。あんなに面と向かって来られて、軽んじてはいけない相手だったんだなって、そこで初めてゾッとするような、ざわざわとしたシーンでもありました。

――ビンタに関して意識した部分はありますか?

北川:ムロさんのことは大好きだから、叩きたくはなかったんですけど、思い切りやってくださいとムロさんも監督もおっしゃっていて。でも、お市の気持ちになるとベタッと触りたい感じでもないというか、そんなに好きじゃないんですね。今まではあんなに控えていたのに、何を軽々しく触ろうとしてるんだという忌々しさがあるし、できれば触りたくない。だから、短めに力いっぱい叩くことが重要で、私としては叩くというよりかは振り払ったような気持ちが強かったんですけど、放送を観たら「パチン!」といい音が上から乗っていて、「あんなに叩いてないけど……」と思いました(笑)。現場ではハエを振り払うような、私とあなたは格が違うのよっていうのが表現できればいいなと思っていました。

――『どうする家康』だけでなく、『女神の教室~リーガル青春白書~』(フジテレビ系)でも共演が続いていた山田裕貴さんとのSNSでのやり取りも話題になっていました。

北川:山田くんとは『どうする家康』の後に『女神の教室~リーガル青春白書~』(フジテレビ系)でも共演が始まって、月9の撮休でNHKにくるというような動きをずっと一緒にしていたので、心の友じゃないですけど、大変な時期を2人一組で過ごした、いると安心するような存在です。占いの番組に出た時に私と山田くんがどちらも「宇宙人」タイプって言われたんですよね。宇宙人に分類される芸能人は、過去に占った人の中でも3〜4人しかいなかったらしくて。持っている波長が似てるんだと思います。「山田くんは天然だから話が噛み合わないでしょ?」っていろんな人に聞かれたんですけど、私はずっと噛み合っていたんですよ(笑)。

――お市にとって戦国とはどのような時代だったと思いますか?

北川:私がお市を演じていて大事にしていたのは、とにもかくにも家系の存続が大事なんだという思いです。兄に関しては織田家を大きくするという思いのもとで戦っていましたし、お市は女性として生まれたので実際に戦に出ることはできないんですけど、織田家の血統の存続を考えていたと思います。結婚してほかの家との結びつきを強めること、それも織田家を大きくすることだと思っていたはず。戦国の世は、自分の家に誇りを持って、置かれた立場で自分の与えられた役割を全うしながら、戦い抜く人たちが生きた時代だと思っています。

――北川さんにとって、お市はどんな役になりましたか?

北川:『西郷どん』(NHK総合)に出演した際に、大河ドラマはこんなに全国津々浦々の方々が観ている、影響力のある作品なんだということを実感しました。それから5年が空いて、本作のオファーをいただいた時に、プレッシャーでしたし、人気のあるキャラクターであるお市を自分がうまく演じきることができるのか、始まる前は不安の方が大きかったんです。でも、いざ収録が始まるとと楽しくて、放送がスタートするといろんな方から反響もいただき、大きな励みになりました。やってよかったなと思っています。普段から「時代劇を絶滅させたくない」と思っていまして、大河ドラマじゃなくてもスペシャルドラマや映画でもっと時代劇が増えてほしいですし、途絶えてほしくないんです。だからこそ、今回こうした形で携われたことは本当に嬉しかったです。

ーーお市という役が北川さん自身にも影響していたりしますか?

北川:働きながら子供を育てるというところが自分とも重なる部分が多くて、勇気をもらうこともありました。お市は自分の考えや意志、世界観を持っている。私も自分らしくやることが大事かなと役を演じながら思っていて、言いたいことを我慢したりせず、自分のできることを精一杯やろうという、勇気をもらうところはありました。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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