『どうする家康』穴山梅雪役を田辺誠一が語る 「『裏切り』ではなく『別の道を選んだ』」

 毎週日曜日に放送されているNHK大河ドラマ『どうする家康』出演の田辺誠一よりコメントが寄せられた。

 本作は、ひとりの弱き少年が、乱世を終わらせた奇跡と希望の物語。誰もが知る歴史上の有名人・徳川家康の生涯を新たな視点で描く。主人公・家康を松本潤、脚本を『コンフィデンスマンJP』シリーズなどの古沢良太が担当する。

 田辺が演じたのは、武田家家臣・穴山梅雪。武田信玄(阿部寛)からの信頼厚く、抜群の知略を生かし、外交戦略のエキスパートとして活躍。家康(松本潤)とも深いつながりを持つようになる。

 田辺は穴山梅雪を演じるにあたって、「一方から見れば正義でも反対から見ればそうではなく、どちらにも曲げられない正義があると思いますので、穴山なりの正義、熱を表現したいと思いました」と役作りで心がけていたことを明かす。

 武田勝頼(眞栄田郷敦)に対しては、「『裏切り』ではなく『別の道を選んだ』と解釈しています」と語り、「勝頼と別の道を選んだシーン(第26回)の『諏訪大社のご加護を』というセリフは、嫌味ではなく、本心で言いました」と振り返った。

 穴山梅雪の最期については、「瀬名(有村架純)が夢見た泰平の世を作れるであろう家康を守るため、『自分が家康だ』と言って討ち取られたと思いたいです」とコメントを寄せた。

田辺誠一(穴山梅雪役)コメント

穴山梅雪の人物像

穴山は歴史上「裏切り者」とも言われていますが、現実には人間は記号のようにひと言では表せないと思っています。一方から見れば正義でも反対から見ればそうではなく、どちらにも曲げられない正義があると思いますので、穴山なりの正義、熱を表現したいと思いました。そういった意味ではたとえ「裏切り者」と思われても、守りたい正義があったのではないかと思います。そしてこの役を演じさせてもらう以上、そこに誤解がある場合、少しでも晴らしたいと思って演じました。あえて言うならば「裏切りではなく、領民の命を守るために主君とは別の道を歩む決意をした男」。

武田家への思い

銃の登場で戦の仕方が180度変わりました。信長軍の圧倒的な銃の装備を目の当たりにした穴山は、辛いけれども現実を見て、負けを受け入れることができる強さを持っていると思いました。義理を欠いていると思われても、負けることで武田家と領民の命を守る。そういった意味ではとてもクレバーで気持ちの強い人だと思いました。そして穴山は信玄公、そして勝頼を心から尊敬していたと思います。ですので、勝頼に対する「裏切り」ではなく「別の道を選んだ」と解釈しています。現況を冷静に判断して負けを受け入れ、武田家と領民の活路を守りたい穴山。劇中では勝頼はそんな穴山の気持ちを理解してくれていて、穴山も最後まで諦めたくない勝頼の気持ちを理解していました。勝頼は本来は武田家を順当に継ぐ立場にはありませんでしたが、甲斐の外の諏訪から来て家督を継ぎ、その重圧の中で存在を証明するために戦い続けるしかなかったのだと思います。ですので「勝頼と別の道を選んだ」シーン(第26回)の「諏訪大社のご加護を」というセリフは、嫌味ではなく、本心で言いました。

穴山梅雪の生き様について

最後は……無念だったと思います。しかしその後、家康が自分の息子に武田を名乗らせて武田家を存続させようとした事を考えると、家康も穴山の決断、気持ちを分かってくれたのかと思いますので、そうだとしたら嬉しいです。また個人的には伊賀越えで、瀬名が夢見た泰平の世を作れるであろう家康を守るため、「自分が家康だ」と言って討ち取られたと思いたいです。

印象的なシーンについて

第26回、勝頼と袂を分かち家康側についた直後、勝頼の訃報を聞きます。本編では短くなっていましたが、そこで家康と共に仏像に手を合わせるシーンが印象に残っています。そういった演技プランではなかったのですが、自然と体が震え涙が止まりませんでした。穴山自身が選んだ道なので後悔してはいけませんが、信玄公の遺志、勝頼への思い、勝頼の無念、さまざまなことが頭をよぎり気持ちが揺さぶられ感情が溢れました。本来は従順を誓った家康の前でそのような感情を出すわけにはいかないのですが、そんな穴山の人間としての感情を、家康も受け入れてくれていると感じました。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

関連記事