『ばらかもん』は黒歴史という“呪縛”を解き放つ なるが紙飛行機に変えた“しがらみ”

 五島に住まう半田清舟(杉野遥亮)の元にライバルが訪れた『ばらかもん』(フジテレビ系)第3話。マネージャーの川藤(中尾明慶)が、書道展で準賞の清舟を差し置いて大賞を受賞した18歳の新人・神崎康介(荒木飛羽)を伴って東京からやって来たのだ。

 プライドの高い清舟を気遣って、神崎と清舟が鉢合わせしてしまわぬように島の子どもたち皆が協力して“清舟包囲網”を築いているのがまた微笑ましい。小学生の琴石なる(宮崎莉里沙)は門番として、神崎の弱点である昆虫を持ち出して撃退したり、セミの抜け殻コレクションをお見舞いしたり。高校生の木戸浩志(綱啓永)と中学生・山村美和(豊嶋花)は何とか話を逸らそうと必死だ。そんな“どうにかして清舟を傷つけたくない”とする彼らの甲斐甲斐しさがいじらしく健気だった。

 神崎は清舟が掲載された誌面を全てコレクションし持ち歩くほどの清舟ファンで、彼のことがきっかけで書道の道に進むことを決めたようだ。かつての清舟がインタビューで語っていたコメントを無邪気に読み上げるも、変化の途中にあり“正解”がわからない清舟にとってそれはかつての呪縛で、聞くに堪えないものだったのだろう。

 「自分の心を人に認めてもらうために私は字を書いている」と言っていた以前の清舟は、やはり“正解”を自分の心の内に見出すのではなく他者に委ねてしまっている。そんな清舟の過去の栄光の証でもあるが、同時に“黒歴史”であり今も彼を縛り付けているインタビュー誌面を、なるたちは紙飛行機にして軽やかに飛ばしてしまう。これまで清舟をがんじがらめにして動けなくしていた鎖のようなものが、なるたちの手によっていとも簡単に解き放たれた瞬間だった。気持ちよさそうに自由に空中を突き進む紙飛行機は何だかキラキラしていて、清舟の表情も晴々としていた。

 「東京に帰りましょう! こんなところにいちゃ駄目です!」と清舟に迫る神崎は「先生がこんなことしてる間に僕はもっともっと先に行っちゃいますよ」と畳み掛ける。そこで清舟の脳裏によぎったのは、“餅拾い”のプロ・ヤスば(鷲尾真知子)から教わった「どうぞお先に」の精神だった。

 「変わりたいんだよ、ここで」「もうしばらく先に行って待ってろ。風に乗ってすぐに追いつくから」と心から負け惜しみでもなくさらりと口にできた清舟は見違えるように強くなった。既に成果を出している人間が、“変化”することを自らに課すのにはとんでもなく勇気がいるだろう。これまで自分が信じて取り組んできたことを一部否定しなければならない場面も出てくるのだから、すがり付きたくなるのも頷ける。しかし、今の清舟はうんとタフになった。

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