『らんまん』“厳しい現実”はどう描かれる? 後半のポイントを制作統括に聞く
「槙野万太郎」と「牧野富太郎」
――牧野富太郎氏の史実通りだと、万太郎には今後厳しい現実が待ち受けています。
松川:悩ましいところではあって、第14週から第16週までが万太郎が世界的な新種を発見し、業績を上げ、子供も産まれたりして家庭もハッピーで、対比して田邊がどんどん落ちていき、格差が開いていって、第17週の最後で田邊が万太郎を破門します。富太郎さんも東大を出入り禁止になってからが本当の不幸の始まりで、悲劇が訪れていきます。これから寿恵子が落ち込む展開があって、そこでは容赦無く深い悲しみを描いていて、そこは覚悟を持って役者も演出も臨んでくれています。『らんまん』の前半とは違ったフェーズに入っていきますね。
――志尊淳さん演じる竹雄と佐久間由衣さん演じる綾の物語は描かれていきますか?
松川:第17週からまた描き始めていますが、これも史実通りに近い展開があります。万太郎と寿恵子、竹雄と綾というのそれぞれのつらい、悲しい出来事が重なる一番しんどいところになります。そこが『らんまん』の中でも振れ幅ですし、そこから再生していく物語になっていきますので。
――牧野富太郎氏の多大な借金問題は朝ドラとしてどのように描いていこうと考えていますか?
松川:万太郎と富太郎さんのキャラクターの違いを意識しながら人物造形をやってきた中で、我々の万太郎は周りに迷惑をかけながら借金をするような人ではないなと思っています。もちろん史実は把握をしながら、どうしてもというところは借金をするんですけど、単位は違います。今後は史実通りに、寿恵子が待合を開くという行動に出るんですけど、それを借金を返すということにすると犠牲になった女性という感じになると思うんですね。お金のために新規事業を立ち上げたことは史実かもしれないですけど、我々の寿恵子は夫の夢を叶えるために、むしろそこは自由に研究をしてほしいという前向きな投資をするというような感じです。
――最終局面に向けての長田さんの脚本はいかがですか?
松川:日本中の植物を明らかにして図鑑を作るというところから始まっているので、そこは納得のいく植物図鑑を発刊するというところがゴールになりますよね。寿恵子は万太郎よりも先に亡くなりますが、その図鑑の完成に間に合ったのかどうかというところはどうするかまだ分からないです。寿恵子としては万太郎の図鑑を作るという夢と一緒になって冒険をしたいというモチベーションがあり、寿恵子自身にも野望があってそれを叶えるという夢に向かって、2人が並走していくのが最後の局面になります。
――クライマックスに向けての今後の見どころを教えてください。
松川:寺田心くんが演じる山元虎鉄という高知の遍路宿「角屋」の息子で、万太郎がヤッコソウを発見する時に案内してくれる少年なんですけど、そこから10年後に上京してきて万太郎の助手になり長屋に住むことになります。心くんが演じるのは虎鉄の中学生時代で、その先を演じる役者さんはまだ発表できないんですけど、その彼とは第2週目の蘭公先生と少年だった万太郎のような関係性で、今度は万太郎が先生の立場になって若者に植物学を教えていく。物語は新しいフェーズに入っていきます。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK