『転職の魔王様』は仕事に悩む全ての人に光を灯す 成田凌が転職者を護るラスボスに

 転職における最良の選択は何か。憲法では職業選択の自由が保障されている。職業は生計を維持するために必要で、社会的分業を担いながら個性を開花する場として個々の人生と切り離すことができない。7月17日にスタートした『転職の魔王様』(カンテレ・フジテレビ系)は仕事に悩むすべての人に向けて、厳しくもあたたかな光を灯すものとなった。

 2000年代以降に社会人になった人にとって、転職はごく身近なトピックだ。業界を問わず一つの会社に定年まで勤務することが難しくなった現在、より良い条件を求めて求人情報をチェックする習慣は多くの人にあてはまるだろう。念願かなって好条件で転職を果たせば、サクセスストーリーとして周囲から羨望の眼で見られる。けれども転職は明るい面だけではない。劣悪な就業環境からのエスケープや、現実と妥協した結果やむなく現在の職場に流れ着いた人も多いはずだ。未谷千晴(小芝風花)にとっての転職は、不安と恐怖に覆われた過去との対峙だった。

 新卒で入った広告代理店で上司のパワハラに遭った千晴は、3年たたずに退職。叔母の落合洋子(石田ゆり子)が経営する「シェパードキャリア」で転職活動を始め、キャリアアドバイザーの来栖嵐(成田凌)と出会う。来栖は知る人ぞ知るすご腕のキャリアアドバイザーで「転職の魔王様」として恐れられていた。

 私事で恐縮だが、氷河期世代の末席に列なる筆者には数度の転職歴があり、多くのキャリアアドバイザーと接してきた。物腰穏やかで傾聴スキルの高い彼らは、企業と求職者を結ぶ役割を果たしている。適性のある仕事を的確にアドバイスする姿は迷える求職者の心のよりどころであり、キャリアアドバイザーとの出会いがその後の人生を変えることも少なくない。しかし一歩離れてみると、キャリアアドバイザーがどんなキャリアを歩み、また何を考えているかは驚くほど知られていない。そういうわけでキャリアアドバイザーの内幕を描く本作への期待値は高かった。

 結論から言うと、第1話を観た限り、筆者の期待は空振りに終わった。自己開示はまだ早いとでも言うように、来栖は自身のことを何も語らなかったからだ。ストーリーの進展とともに来栖の履歴も明かされるのだろうが、それ以上に来栖が徹頭徹尾、依頼人の千晴に寄り添っていたことがその理由だった。

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