『らんまん』喜ばしい寿恵子の妊娠 朝ドラで描かれてきたヒロインの妊娠と出産を振り返る

 「月給の上らないのに引換え、子供は次々に生れ、十三人も出来た。財産は費いはたし一文の貯えもない状態だったので、食うために仕方なく借金もしなくてはならず、毎月そちこちと借りるうちに、利子はかさんでくる」

 植物学者・牧野富太郎氏の自叙伝における記述だ。そこに書いてある通り、牧野氏は妻である寿衛子との間に13人の子をもうけた。必然的に生活費は膨らみ、とても少ない給料では賄えず借金に手を出すことになる。

 牧野氏の生涯をモデルにした『らんまん』(NHK総合)第16週でも、ついに万太郎(神木隆之介)の妻・寿恵子(浜辺美波)が第一子を妊娠。ここ最近、万太郎は図鑑づくりや大窪(今野浩喜)との共同研究にかかりっきりだったはず。なので我々視聴者にとっても寿恵子の妊娠は寝耳に水ではあるが、新種の発見と図鑑の完成に続く喜ばしい出来事となった。

 朝ドラにおいて、一つの大きなトピックとなるヒロインの妊娠と出産。作品によってその描き方は様々で、出産までの期間をじっくりと時間をかけて描くパターンもあれば、週が明けたらいきなり子供が生まれているパターンもある。

 直近でいえば、『舞いあがれ!』(NHK総合)は後者で、ヒロインの舞(福原遥)は東大阪の町工場と商品開発を行う会社を立ち上げた直後に妊娠が発覚。翌週には元気な女の子が生まれ、さらにはその日のうちに娘・歩が保育園生にまで成長するというかなりスピーディーな展開となった。しかしながら、不思議と駆け足に感じなかったのは、歩が生まれた直後の舞と貴司(赤楚衛二)の会話が空白期間を想像させるものになっていたからだろう。

『舞いあがれ!』母になった舞の人生はどう変わる? 出産で転機を迎えた朝ドラヒロイン

「赤ちゃん、できた」  そう言って笑う舞(福原遥)と、その言葉を聞いて嬉しそうな貴司(赤楚衛二)はとても幸せそうな顔をしていた…

 歩の夜泣きに貴司はすぐさま対応し、「もっと頼って。2人で親になったんやから」と舞をフォロー。たった数秒、されど数秒。その短いやりとりだけで、二人が助け合いながら歩を育てていったことが伝わる。『スカーレット』(NHK総合)の場合も特に妊娠期間が描かれることはなく、信楽焼の窯元で出会った喜美子(戸田恵梨香)と八郎(松下洸平)の結婚式から時が流れ、二人の息子・武志(又野暁仁)はすでに4歳になった状態で物語に登場した。

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