『東京リベンジャーズ2』は儚くも美しい闘争記 後編の感涙必至な“蹴り”を武道家が解説

 刹那的な儚さを、“美しい”と感じてしまうのは、危険なことだ。

 現在公開中の映画、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』(以下、『決戦』)のエンディングで、SUPER BEAVERも警告している。

「儚いから美しいなんて 命には当てはまらなくていい」と。

 だが、この『決戦』の登場人物たちを見ていると、その儚さを美しいと捉えてしまう。40代のおっさんを、こんな文学少年(中学2年生)に戻してしまうこの『決戦』という作品は、本当に危険だ。

 筆者が10代の頃、『ビーバップハイスクール』や『ろくでなしブルース』を観て“儚さ”や“美しさ”を感じる瞬間など、1秒もなかったというのに。

 本来、不良たちのバトル漫画であるはずの今作がこんなにも儚い物語になってしまったのは、ある1人のキャラのせいである。

 それは、村上虹郎演じる羽宮一虎だ。

 元々は東京卍會創設メンバーであり、マイキー(吉沢亮)たちのかけがえのない仲間であり、パンチパーマが日本一似合わない愛嬌のあるキャラだった。だが、ある事件をきっかけに闇落ちし、マイキーたちと敵対することになる。その際の「マイキーのために良かれと思ってやったことのせいで、人を殺めてしまった。全部マイキーが悪い。マイキー殺す」という主張は、あまりにも理不尽で1mmも共感できない。だが、そうでも思わなければ自我が保てなかったのだろう。一虎が殺してしまったのは、マイキーの兄・真一郎(高良健吾)だったのだから。

 闇落ち後の一虎は、マイキーを殺すために敵対組織・芭流覇羅(バルハラ)に加入する。昔の愛嬌は消え、敵と見るや徹底的に叩きのめす。だが、一虎は凶暴になればなるほど、いつか壊れてしまいそうな危うさを醸し出す。その美しくも凄愴な容貌や、独特のかすれ声も相まって、「凶暴なかげろう」とでも言うべき存在になった。

 一虎はきっと、“死に場所”を探していたのではないだろうか。

 前編のレビューでも触れたが、一虎を見ていると、過去に村上虹郎自身が演じた2人の実在した人物がオーバーラップする。『るろうに剣心 最終章 The Beginning』における沖田総司と、『燃えよ剣』における岡田以蔵だ。2人とも、幕末の動乱を象徴するような人斬りである。戦いに生き、敵を斬り殺すことだけが、自らの存在証明だった。周囲が声高に唱える“倒幕”やら“尊王攘夷”やら、そんな小難しい理想にも、2人は興味がなかったのではないか。肺病を患い、長生きできないことを覚っていた沖田と、郷士という武士の中でも低い身分のため、立身出世は望めない以蔵。彼らの望みは、強い相手と戦い続け、そして、最期はより強い相手に殺されることだったのではないか。だからこそ、緋村剣心と対峙した沖田も、土方歳三と斬り結んだ以蔵も、あんなにも嬉しそうだったのだ。戦いの中で死にたかったのだ、彼らは。

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 一虎にとっての剣心や土方は、言うまでもなくマイキーだ。一虎は、マイキーに殺されたかったのではないだろうか。最期、沖田は病気で死に、以蔵は処刑された。戦いで死ぬことは叶わなかった。本来の過去ならば、一虎はマイキーに殺され、それをきっかけにマイキーは闇落ちしていくことになっている。その過去を正すため、タケミチ(北村匠海)が再びタイムリープして来るのだ。一虎は、結局マイキーに殺されるのか、それとも、過去が書き換えられるのか。その点は、実際に劇場で確認してほしい。原作未読の方は、ぜひ未読のままで観てほしい。

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