『あなたがしてくれなくても』結末は賛否両論の大荒れ状態に? みちが導き出した答え

 セックスレスが原因ですれ違う2組の夫婦を描いてきた木曜劇場『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)。その最終話は、本作が始まったとき以上にSNSでは賛否両論の大荒れ状態となった。きっと、それだけ視聴者を夢中にさせることに成功したドラマだったのだろう。

2組の夫婦がした「離婚」の違い

 反響を見てみると、圧倒的に多かったのが「みち(奈緒)と誠(岩田剛典)にくっついてほしかった」という意見。それは視聴者のみならず、誠の妻だった楓(田中みな実)もそう思っていたし、みちと最後まで別れたがらなかった陽一(永山瑛太)も、離婚するからには“そうなるはずだ”と覚悟していた。しかし、みちと誠は結ばれることはなかった。

 なぜならみちは、たとえ離婚をしたとしても、陽一への気持ちがなくなることはなかったから。振り返ってみれば、みちと陽一の関係は、みちが先に恋に落ちたことから始まった。彼のことをよく知らないうちから強烈に惹かれていったみち。それは、簡単に言えば「タイプ」だったということだ。その「タイプ」というのは、人間なかなか変わらないもので……。

 誠がどんなに真摯に向き合ってくれたとしても、その言動にどれだけ救われたとしても、やっぱり心を奪われてしまうのは陽一なのだろう。だからこそ自分で何度も「ずるい」と感じていた。誠には、陽一に傷ついた自分を癒やすためにしか求めていなかったのだから。みちが陽一に離婚を迫ったときに誠の名前を出さなかったのも、やっぱり陽一を傷つけないため。

 つまりは、残酷な見方をすればみちにとって、陽一との離婚の原因は直接的に誠の存在が関わっているわけではないということ。一緒にいるのが辛いくらい、これだけ傷ついているのだとわかってほしいという訴えの離婚、とも言えるかもしれない。それは、むしろまだ愛がある証拠なのだけれど。

 しかし、誠はそうではなかった。楓とは関係なくみちを求めた。みちのことが好きで、忘れられなくて。その思いが強くなっていくにつれて、そっけない態度を取ってきた。もはや楓を傷つけるとわかっていながら、だ。みちと結ばれるために、もう楓とはいられない。誠にとっては愛にしっかりと終止符を打つ離婚だった。

「夫婦」ではなくなった先に築かれた、新たな関係性

 だからこそ離婚後、それぞれの関係性はまったく違うものになったのではないか。誠と楓はもうお互いに対して未練は一切なく、むしろ楓がみちへの想いを吹っ切れない誠の背中を押すほどだ。なにより誠と楓は離婚したことで成長を感じられた。窓越しに勉強をしているみちを見かけても、ぐっと我慢してその場を立ち去る誠。そして、ファッション雑誌の編集長という夢は叶わなかったものの、新たな環境で次なる目標を見つけて輝き出した楓。

 パートナーを支えることに生きがいを見出しがちな誠は、その想いをぶつける以上に引く余裕と優しさを覚えたし、楓もまたパートナーに一喜一憂するのではなく仕事に集中できる状況が自分にとって幸せだと気づくことができた。それも結婚して、離婚をしたから学べたこと。そして、今ではそんな気づきをくれた相手に感謝もしている様子。その関係性は、お互いの人生を応援する新たな「戦友」だ。

 一方で、みちと陽一は「ダメな元夫婦」なんて言いながら、きっかけさえあればすぐにでも元サヤに戻ってしまいそうな空気感。「離婚は平和のための手段」という言葉が子どもたちの口から出るほど離婚に理解のある陽一の姉からも「今はふたりとも頑張りどきなんだから耐えろ!」なんて言われる始末。それくらい、みちと陽一は離婚という大きな転機を迎えてもなお、どこか未熟さがにじんでいたように思う。

 決着をつけた誠と楓に対して、なんとも踏ん切りのつかない別れても「好き同士」な関係性を続けているみちと陽一。それもまた彼ららしいとも言える。影絵ではしゃいだり、じゃんけんの罰ゲームで笑い転げたり……いつまでも子どもっぽくてふわふわしていて。そんな時間が2人にとっては幸せだということ。

 もちろん、陽一の“妻だけED疑惑”や子どもに関する問題について、スッキリと解決したわけではない。「なんにも解決してなくない?」なんて視聴者がモヤモヤするのも納得だ。だから、ラストにエンドロールで流れた光景は、もしかしたら本当に2人が再婚した映像とは限らない。

 いつかの思い出かもしれないし、みちが夢見た想像の中の映像かもしれない。ただ一つ言えるのは、あの光景がみちと陽一の理想的な関係性だということ。お互いにいろいろダメなところがある。それでも、あなたと一緒にいたい。それが、みちの導き出した答えだ。

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