『unknown』高畑充希と田中圭の口づけで“愛の物語”が完結 町田啓太に感じた“美しさ”も
『unknown』(テレビ朝日系)がついに完結した。それは小さな嘘から始まった、愛憎入り混じる物語だった。
前回、第8話にて明らかになった加賀美(町田啓太)という連続殺人鬼の存在。そこには25年前、児童養護施設の“梅先生”として加賀美の親代わりだった梅(木野花)が大きく関わっていた。両親を亡くした加賀美は梅に読み聞かせてもらっていた絵本『吸血鬼がやってきた!』から、両親を殺したのは吸血鬼だと教えられる。梅としては軽い気持ち、まだ少年だった加賀美を守りたい一心でついた嘘だったが、その小さなほころびが、今回の悲劇を生むきっかけとなってしまう。両親を殺したのは加賀美自身だとも知らずに。
公式リリースで解説されている第1話から張り巡らされた伏線や町田啓太の演技プランなど(※1)を考慮すると、撮影が進むにつれて調整していった部分はあれど、最初から骨組みはしっかりと構築されていた美しい作品と言える。その上で、筆者が最終回を観て、最も胸を締めつけられたのは、加賀美にはこころ(高畑充希)への恋愛感情があったのではないかということだ。
「吸血鬼は人間の敵。吸血鬼は悪い生き物」と自分の信じる正義のもと、こころにアイスピックを振りかざす加賀美。結婚式場でこころを殺せなかったのは、一条(井浦新)の登場という予定外のことが起こったためではあるが、アイスピックを手に躊躇していた加賀美の行動も一因にある。回想として彼の脳内にフラッシュバックするのは、こころの笑顔がいる煌めく思い出の日々。憎いと思いながらも、自分でも気づかぬうちに、こころを愛する感情が加賀美にはあった。こころに頬を包まれながら、加賀美が叫ぶ「なんで吸血鬼なんだよ!」はその心情をはっきりと表していた。「サイコパス」というような稚拙な表現では片付けられない、人間が吸血鬼を憎み、そして愛した、悲恋が確かにそこにはある。そのことを伝えているのは町田の演技であり、虎松(田中圭)に銃口を向けられ、「ありがとうございます」「じゃあね」と覚悟を決め、微笑む加賀美にはどこか美しささえ感じさせる。
最終回のオンエア後、高畑充希が町田、田中圭とのスリーショットとともに、「1番の衝撃」と自身のInstagramに投稿していたように、南十字(新納慎也)が地底人だったというのは、恐らく誰一人予想できなかった結末だろう(居酒屋「どんぞこ」で開かれた披露宴の余興のリハーサルで、南十字は触覚を気にしている)。人間と吸血鬼が共存する『unknown』は、様々な解釈の仕方ができるドラマであるが、キャスト、制作陣が伝えてきたのは、これは愛の物語だということ。「私が吸血鬼でも愛してくれる?」――その問いかけに、虎松の中で、もう迷いはない。火事になった「うめぼし堂」ではなく、燃えるような夕陽をバックに深く長い口づけをする虎松とこころの画に、また美しさを感じずにはいられなかった。
参照
※1:https://post.tv-asahi.co.jp/post-220492/
■配信情報
『unknown』
TVer、TELASAにて配信中
出演:高畑充希、田中圭、町田啓太、麻生久美子、吉田鋼太郎ほか
脚本:徳尾浩司
監督:瑠東東一郎、金井紘
音楽:河野伸
ゼネラルプロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、岡美鶴(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
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