重岡大毅は中井貴一のような名優に? 『それパク』北脇役で見せた“引き算”の演技

 いよいよ最終回を迎える芳根京子主演のドラマ『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系)。早くもジャニーズWESTの重岡大毅演じる北脇さんロスを心配する声が出ている。そこで、今作で重岡が体現した北脇役の魅力について触れてみたい。

 今作での重岡演じる北脇は、知財に関してのことや亜季(芳根京子)への指導は理路整然として饒舌だが、ビジネス以外の部分では多くを語らずに、感情を表に出さない。だからこそ、孤独な思いや感情が背中で伝わるのが魅力だ。当初は、ビジネスと割り切る非情さや、亜季に経験を積ませている思いが伝わらず、亜季からもはや人格否定みたいなことを言われることが多々あった。そうした自分への直接的な批判はグッと飲み込むものの、その後ろ姿はどこか寂しさを感じた。

重岡大毅が際立たせる“人間臭さ”と痛みの過去 『それパク』では重層的な役割を担う

重岡大毅がまたなんとも魅力的なキャラクターを演じている。『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系)に登場する「弁理士」の…

 例えば第3話では、調査結果の報告書を亜季に書かせたが、実は先に報告書を提出していた北脇。亜季から「北脇さんが私を信用して仕事を任せてくれたと思ったんです。だから私本当に嬉しくて。そうじゃなかったんですね」と涙ながらに訴えられた時に、北脇の表情が一瞬だけ崩れる。期待しているからこそ厳しい姿勢をとる。あの堪える表情から、北脇の辛い親心が伝わってきた。

 第4話では、亜季にツキヨンというキャラの特許出願を任せたが、亜季が提出直前になって躊躇した。北脇は時間がないと感情をあらわにして急かすが、亜季は「ツキヨンはみんなのものということに価値がある。誰かが独占してはいけない。私は月夜野がみんなのものを奪い取るような会社にしたくない」と訴え、最後まで強く抵抗した。そんな亜季に代わって特許出願しようとしたが、悩んだ挙句にそっとパソコンを閉じた。この時の葛藤する表情からは様々な苦しみを推し量ることができ、そして最後は弟子と心中する覚悟を決めたかのような表情を浮かべた。社員たちの汗と結晶を守る弁理士としての立場と、師匠として成長する亜季への期待、この間で揺れ動く葛藤が、無表情だけど痛いほど伝わる演技を見せた。

重岡大毅の演技には色気も宿る いかなる役柄も許される“懐の深い”俳優になるまで

芳根京子が主演を務める日本テレビ系ドラマ『それってパクリじゃないですか?』で、笑顔を封印したクールな演技で話題となっている重岡大…

 一方で、かわいい弟子思いの一面がダダ漏れとなっていき、堅物だからこそのかわいげのある行動が北脇を魅力的な役にしている。第8話では、特許問題が一旦解決し、弁理士の又坂市代(ともさかりえ)が「これも藤崎ちゃんのおかげよ」と言うと、あの北脇が、自分が褒められたかのように初めて満面の笑みを浮かべた。亜季の成長を嬉しそうにする師匠の姿からは、指導者として新人を育てる苦悩と、育っていく喜びを噛みしめる様子が感じられ、重岡が見事にそれを表現した。

関連記事