時代をまたぎ継承されるロマンポルノ 3人の監督が“今”を切り取った3作品をチェック

 「日活ロマンポルノ」の50周年記念プロジェクトである、ロマンポルノのスピリットを継承しながら、時代の“今”を切り取る「ROMAN PORNO NOW」(ロマンポルノ・ナウ)。2022年に連続公開された『手』、『愛してる!』、『百合の雨音』、各作品のBlu-ray&DVDと、3作品を一挙に堪能できる『ロマンポルノ・ナウ BDコンプリートBOX』が発売になる。音声コメンタリーやメイキング映像を収録した特典映像も見逃せない3本をそれぞれチェックしよう。

2022年、歴史に新たな3本が刻まれた

 まずはおさらい。今も多くのファンに愛され続ける「日活ロマンポルノ」。1971年に日活が打ち出した、当時の映倫規定におけるこの成人映画レーベルは、開始当初「10分に1回絡みのシーンを作る、上映時間は70分程度」といった独自ルールを守りさえすれば、比較的自由に挑戦ができる場であり、多くのスタッフ・キャストが育っていった。若手監督の登竜門とも呼ばれ、実際、相米慎二、根岸吉太郎、池田敏春、那須博之、森田芳光といった、名匠たちも日活ロマンポルノ作品を経験している。国内外で高く評価される、映画史においても重要なレーベルなのだ。

 50周年を迎え、そこに「ROMAN PORNO NOW」として、世代も違う3人の監督による新たな3本が刻まれた。

松居大悟監督『手』

 『人のセックスを笑うな』で知られるエッセイスト、小説家の山崎ナオコーラの短編集「お父さん大好き」所収の「手」を原作に、“おじさん”にばかり惹かれて付き合ってきた主人公が、同年代の同僚と親しくなり、変化していく様子を見つめたドラマ。主人公・さわ子の言葉にできない微妙な心のもやもや、ざわめきを繊細に掬い取る松居大悟監督(『くれなずめ』『ちょっと思い出しただけ』)ならではの、まさに“今”だから放つことのできたロマンポルノ作品になっている。

 不器用な主人公さわ子を演じる福永朱梨の温度感や、一歩間違えば作品を壊しかねないダメ男・森を演じる金子大地のバランス力、かわいさと無神経さが絶妙な上司・津田寛治に、父役の金田明夫など、キャストがみな好演。姉とはまったく違ったキャラクターの妹役の大渕夏子にも注目だ。性描写や性に関する会話も少なくないのだが、全体的に爽やかな仕上がりで、女性の成長譚になっている。ロマンポルノ作品を観たことがない女性にもおすすめできる一篇。

金子修介監督『百合の雨音』

 3人のなかで唯一、日活ロマンポルノ作品を手掛けた経験のある金子修介監督(『DEATH NOTE デスノート』シリーズ)による『百合の雨音』は、タイトル通り、いわゆる“百合もの”であり、「ロマンポルノを見たい!」との純粋な要望に応えた王道の作品となっている。高校時代の恋愛にトラウマを抱える葉月(小宮一葉)は、恋愛に対して臆病だった。しかしあるとき、ひそかに想いを寄せていた上司の栞(花澄)と一線を越えてしまう。

 とにかく女性の身体を美しく撮ろうと力を注いだことが伝わってくる1本。日本でもこのところ知られるようになった、性的なシーンの撮影をサポートする専門的な知識を持つスタッフ、インティマシー・コーディネーターが導入された作品である。メイキングでは、ベテランの金子監督の演出を見たり、撮影期間中の話を聞けるとともに、インティマシー・コーディネーターの西山ももこさんの実際の仕事を見ることができて貴重だ。

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