横浜流星、2025年大河ドラマ『べらぼう』蔦屋重三郎役で主演 脚本は森下佳子が担当

 2025年NHK大河ドラマのタイトルが『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』に決定し、主演を横浜流星、脚本を森下佳子が務めることが発表された。

 本作は、“江戸のメディア王”蔦屋重三郎を描く物語。主人公・蔦屋重三郎を横浜、脚本を『おんな城主 直虎』(NHK総合)、『大奥』(NHK総合)などの森下が担当する。

コメント

森下佳子(脚本)

「つた重って知ってます?」と制作統括の藤並さんからお電話をいただいたのは昨年のこと。
むかーしにミッドタウンで展覧会やってたあの人かなぁ、確かキャッチは『江戸のぴあを作った男』だったっけ。私も情報誌の編集をしてたので、興味をひかれて覗きに行ったことを思い出した。その時は「映画にする人いそうだな。面白いおっちゃんだし、吉原なら画面華やかだし」と思って帰ったのでした。
だから、今回のこの企画を聞いて、藤並さんはどうかしてるんじゃないかと思った。2時間じゃなくて50時間もかけてやると言う。合戦もない、もちろん天下もとらないし非業の死を遂げるわけでもない、畳の上で脚気で死ぬ本屋のおっちゃんの人生を。「何やるねん」……きっと、のっけはそういう印象を持たれるんだろうなぁと覚悟している。だって、私もそう思ったから。
でも、今の私はこの時代に夢中だ。つた重の作り出した黄表紙や洒落本の面白いこと、錦絵の素晴らしいことはもとより、その作者たちもそれぞれ極めて個性的。でも、作品や逸話にほの見える心中には物書きの端くれとして、どうしたって共感してしまう。周辺も面白い。光と闇を抱え込む吉原の文化・役者の世界、跋扈する伝説の泥棒、五千石心中、そして報われぬ天才・源内。その大きな背景には近づいてくる異国がある。成り上がり田沼意次とサラブレッド松平定信、怪物一橋治済がうごめくきな臭い政治の世界がある。そこに群がる有象無象や悪党たち。天災、思惑、野望、罠、暗殺、暴動、転覆!
「戦」がなくなった時代だからこそ、いかに生きるかどう生きるか、己の価値、地位、富の有無、誇りのありどころ、そんなものが新たな「戦」としておもむろに頭をもたげだした。それがつた重の生きた時代だ。そのうねりの只中で、波を読み、波に乗り、あまつさえ作り出し、そして呑まれた、つた重。その彼が溺れもがく中で最後に世に放ったのが「写楽画」と言う謎の産物なのだ。そこには一体どんな思い、どんな意味があったのか……。きっと明確な答えは存在しない。現実の所業であるかぎり、理由は一つなんてことも考えにくいだろう。でも、だからこそ、興味は尽きるところがない。つまり夢中だ。
というわけで、今の私は自分が夢中になったように皆さんにも夢中になってもらえると嬉しいなと思っています。要はそんなドラマを目指せばいいんだなと考えています。問題は、私にそれができるかどうかだってことも自覚しております。
至らぬところも多いかと存じますが、私なりに力を尽くしますので、皆様には、何卒お引き立てのほど、よろしくお願い申し上げる次第にございます。

藤並英樹(制作統括)

“べらぼう”とは、そもそも「たわけ者」「バカ者」という意味でした。それが時を経て、「甚だしい」「桁外れな」という「普通を超える」様を表す言葉に変化。江戸の言葉の「べらんめえ」の語源ともいわれています。
その周囲には常識外れにしか見えない発想・行動から、蔦屋重三郎はきっと「べらぼう奴(め)!」と罵られていたことでしょう。しかしその扱いは時代の寵児へと変わっていきます。そんな重三郎に親しみと尊敬を込めた言葉として「べらぼう」と名付けました。
蔦屋重三郎が生きた1700年代の江戸時代は、町民文化が花開いた時代です。かつて映画やドラマなど様々な映像作品や物語で描かれてきた“時代劇”の時代。「べらぼう奴(め)!」といわれながらも八百八町の江戸を舞台に躍動する蔦屋重三郎を主人公に、市井の人々の生きざまや喜怒哀楽を描く娯楽時代劇を、放送100年の節目にお届けしたいと思います。

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
NHK総合にて、2025年放送
主演:横浜流星
脚本:森下佳子
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓

関連記事