『合理的にあり得ない』天海祐希が探偵七変化 永遠に見ていられる松下洸平とのコンビ芸
ターゲットに精力剤を含ませて密会現場を撮影し、金になりそうなクライアントの仕事は無理難題でも請け負う。ノープランで現場に部下をぶっこんだかと思えば、ハバネロを生で丸かじり。こんな探偵がいたら、あなたは依頼したいと思いますか? 4月17日にスタートした『合理的にあり得ない〜探偵・上水流涼子の解明〜』(カンテレ・フジテレビ系)は、第1話からあり得ない設定の連続で私たちを翻弄した。
ミステリーの主役といえば探偵である。家政婦、美食家、大学生、犯罪学者などドラマで描かれる探偵たちのバックグラウンドはさまざまだが、新たに元弁護士というバリエーションが加わった。弁護士がなにゆえ探偵稼業に手を出したのか? その疑問は徐々に明かされることになる。柚月裕子原作の主人公は上水流涼子(天海祐希)。コンビを組むのは頭脳明晰な貴山伸彦(松下洸平)だ。
“殺しと傷害はNG”の「上水流エージェンシー」。第1話の依頼人は松下祥子(街田しおん)だった。祥子は、土地をだまし取り夫を自殺に追いやった悪徳ブローカーの神崎(髙嶋政伸)から2千万円を取り返してほしいと言う。さっそく神崎に接触を試みる涼子と貴山だったが……
頭の良すぎる2人の会話は、さながら弁が立つガキの喧嘩で、仲の悪さが逆に相性の良さをうかがわせる。尾行、変装、潜入捜査にショベルカー、正体がバレてもお構いなし。キャラがとっ散らって渋滞しているのに、最後はしっかりまとめる涼子役の天海。対する松下演じる貴山は、クールな表情で毒を吐き、涼しい顔でサラっと嘘をついたりする。うさん臭い役を真摯に演じる松下は、嘘っぽさが真に迫っていて最高だ。天海と松下の言葉の応酬、言外のやり取りはテンポが良くて永遠に見ていられる。
あり得ないコンビはあり得ない方法で相手を出し抜く。ハードボイルド味もある原作を脚本の根本ノンジは大胆に再構成。行間から浮かびあがるモノクロームの人物像にカラフルな彩色をほどこした。おバカな見た目と2手、3手先を読む策士のギャップ。余裕しゃくしゃくと思わせながら、紙一重のスレスレのスリルを演出する探偵コンビを演技巧者の天海と松下は軽快に転がしてみせた。