2023.04.05 08:00

満島ひかり「“子どもたちにとって気になる大人”でありたい」　10代の経験と独立、そして今

文・取材＝宮川翔、写真＝MAYA MATSUURA

「映画やドラマや舞台に出会えたからこそできることがたくさんある」

ーー満島さんが10代、20代だったとき、そういうアドバイスをしてくれるような方っていたんですか？

満島：私は、10代の頃はちょっと苦しかったんです。音楽グループでの活動のために沖縄から13歳で上京して、踊ったり歌ったりすること自体は楽しくやっていたのですが。親元を離れての東京で、子どもながら大人の世界に足を踏み入れたことに対応できなかったのか、ストレスが蕁麻疹として肌に出てしまったんです。それで学校に行けなくなってしまったり、お仕事ではお化粧を厚く塗って隠していたし、外に出るとチラチラっと周りの方に見られて苦しくなるような時期が何年くらいかありました。人生の中のたかが何年かだけど、当時の私にはとても大きな痛みになっていて。周りの大人たちは「大丈夫？」と声をかけてくれるんですけど、実際に親身になってくれる人は誰もいなくて。そんなとき、いまもお姉さんのように慕っている美容のお仕事の方が、「このままじゃダメだよ、ちゃんと治そう」って言って助けてくれたんです。「将来何になりたいの？」って聞かれて「役者になりたい」って答えたら、「それじゃあ尚更治さなきゃ」と肌のケアの仕方を教えてくれたり、いつも気にかけてサポートしてくれました。私にとっては、あたり前のように温かなことをしてくれる大人の愛情が本当に嬉しかったし、めちゃくちゃ大きかった。子どもの頃のその経験は、今の自分にも大きな影響になっていると感じます。

ーーまさに『アイラブみー』に繋がるようなお話しですよね。多岐にわたる活躍をされつつも、満島さんの中で柱となるのは、やっぱりお芝居、役者としてのお仕事になるんでしょうか？

満島：それは間違いなくそのハズです。『アイラブみー』もそうですけど、映画やドラマや舞台に出会えたからこそできることがたくさんある気がします。ものすごい数の才能とかエネルギーが、みんなでひとつの物語に溶け込む現場が今もずっと大好きだし、ロマンティックに感じていますね。時代が進むにつれて様変わりしていく、メディアと隣合わせの俳優業だからこそ、ときに苦しくも愛おしいというか。

ーーちなみに『アイラブみー』を通して、何か新しく感じたことだったり、気づいたことはありますか？

満島：今までに50ほどのキャラクターの声をやってみて、コレをいつか、子どもたちに紙芝居のような形で見せられたら面白そうだなとか、思ったりもします。その場でクルクル声を変えて。いまはちょっとお休みしているんですけど、脚本家の坂元裕二さんと小泉今日子さんと一緒に、「詠む読む」っていう全国を巡る朗読劇の旅をやっていまして、そこでも、いつか紙芝居もやりたいねって話していたんです。10分くらいのミニマムなお話だったら、子どもたちも飽きずにいられるんじゃないかなって。ミュージシャンはいろんな場所に行ってライブをすることができるけど、役者さんは大掛かりになるもんなーと思っていたけど、紙芝居だったら気軽にできるかもって。

ーーめちゃくちゃいいアイデアだと思います。それはぜひ実現してほしいです。そのためにもまずは『アイラブみー』を多くの方に観ていただかないといけないですよね。

満島：一度は観てほしいな。お父さんやお母さん、学校の先生は教えてくれないような悩みを抱えている子どももいれば、子どもに質問されてもどう答えたらいいかわからずに困っている大人もいると思います。『アイラブみー』は、ちょっと立ち止まってしまう気持ちとか、独りぼっちになってしまう気持ちへのヒントが散りばめられた作品になっていたい。私の友達に、「ひかりちゃんのいままでの仕事の中でベスト」って言う人もいました。「え、子ども向けのアニメ？」って思っている人も、ぜひ気軽に観てみてください。今は50役ですが、まだまだ役が増えていくかもしれませんし。こうなったら、ギネスを目指そうかと思います（笑）。

■放送情報
『アイラブみー』
NHK Eテレにて、4月5日（水）スタート毎週水曜15:45～15:55放送
過去回のセレクション：NHK Eテレにて、毎月第4・第5週火曜8:25～8:35放送
過去回のセレクションの再放送：NHK Eテレにて、毎月第4・第5週木曜7:20～7:30放送
放送後1週間、NHKプラスにて見逃し配信予定（木曜7:20～7:30の放送回をのぞく）
出演：満島ひかり（声）
脚本：竹村武司
オープニングテーマ・挿入歌：ハンバートハンバート
クリエイティブディレクション：古屋遙
ロゴ・キャラクターデザイン：obak
グラフィックデザイン：田部井美奈
アニメーションディレクター：髙橋龍之介
音楽（劇伴）：DJ Codomo
アニメーション：ODDJOB Inc.
監修：池田裕一（昭和大学／小児科）、遠藤利彦（東京大学大学院／発達心理学）、北山ひと美（和光小学校・和光幼稚園／性教育）、酒井厚（東京都立大学／発達心理学）、汐見稔幸（東京大学／教育学・教育人間学・育児学）、田中俊之（大妻女子大学／ジェンダー論・男性学）、細田直哉（国立市幼児教育センター／生態心理学）
制作：NHKエデュケーショナル
制作・著作：NHK
©︎NHK
公式サイト：https://nhk.jp/iloveme