『プーと大人になった僕』が思い出させてくれる大切なこと ディズニー実写映画の創造力

 子どもたちだけでなく多くの大人の心に残り、親しまれてきたディズニー作品『くまのプーさん』。くまのプーさんやその仲間たちが繰り広げる冒険と、生きることへの道しるべを示してくれる数々の名言は、長きにわたり人々に愛されてきた。そんな『くまのプーさん』の実写映画である『プーと大人になった僕』が、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて3月31日21時より放送される。

 6月9日に日本公開される再“想像”版(本国が“reimagining”と発表しているため、それに倣い“創造”ではなく“想像”とする)『リトル・マーメイド』、そして4月28日にディズニープラスで配信が開始される『ピーター・パン&ウェンディ』など、クラシック作品を再び世に送り出す動きが活発化しているディズニー。

 『リトル・マーメイド』は先に挙げたように、より現代的な想像を膨らませた上での新たなる作品形態だが、この流れを便宜上“ディズニー実写化作品の隆盛”として話を進めたい。これまでもディズニー実写作品が公開されるたび劇場に足を運んできたが、そのたびに彼らの飽くなきチャレンジ精神と“良きものを創ろう”とする気概を感じてきた。ディズニー実写作品は、現代にクラシックな名作を蘇らせ、時に新たなイマジネーションを生むクリエイティビティであり、そしてそれは”かつての子どもたち、今の大人たち”に対する愛なのだと思い至った。

 本稿では他のディズニー実写作品を例に挙げ、その傑出した創造力と私たち観客に向けられた思いについて考えてみようと思う。

 ディズニーのクラシック作品を幼少期に観ていた人に聞いてみたいのだが、どんなシーンが印象に残っているだろうか。食器や小動物が喋る姿、プリンセスが歌う歌、蒸気船を操縦したりとんがり帽子を被り魔法を使うミッキー。人によって忘れられないシーンがあるだろう。

 『くまのプーさん』を観ていた人にとって、それは例えば大好きな蜂蜜を探しに冒険するプーだったり、プーと仲間たちが楽しむティーパーティーかもしれない。しかし、なかでも想像力を刺激されるのは、プーたちが住んでいる100エーカーの森の美しさではないだろうか。

 小川や木の株があり、どこか懐かしく、いつか来たことのあるような優しさに満ちた森。絵本やアニメを見て、彼らの住む森に思いを馳せた人はきっといるだろう。そんな場所が、『プーと大人になった僕』では高い技術によって完璧に再現されている。

 森に咲く野花ひとつをもってしても最大限の配慮が施され、森全体が持つノスタルジーを決して壊さぬよう、硝子細工に触れるような繊細さで再現された100エーカーの森は、観客を“あの”プーさんの世界へと誘ってくれる。『プーと大人になった僕』の世界は、子どもたちが最初に作品に触れて得た感動を実写で損なわないよう、そしてその感動を倍増させられるよう、持てる技術をすべて以て創造されているのだ。

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