宇野維正の興行ランキング一刀両断!

中国で『すずめの戸締まり』がロケットスタート 『THE FIRST SLAM DUNK』も続くか?

 先週末の動員ランキングは、『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』が週末3日間で動員32万2000人、興収3億9200万円をあげて、前週の3位から1位に返り咲いた。24日間の動員は211万856人、興収は25億4887万9730円。コロナ禍に入って以降、最も映画館への「戻り」が遅かったファミリー層が本格的に戻ってきたことで、4年ぶりに春休み興行の主役に復活したかたちだ。映画興行全体にとって、これは間違いなく朗報だろう。

 ランキング上位4作品の顔ぶれは変わらず。先週末2位の『わたしの幸せな結婚』は10日間で94万8961人を動員して興収は12億7109万4280円。3位の『シン・仮面ライダー』は10日間で75万1518人を動員して興収は11億4708万3810円。恐るべきは4位の『THE FIRST SLAM DUNK』だ。正月興行の覇者になったのに続いて春休み興行でも主要プレイヤーの一角となった同作は、公開から114日間の動員が860万383人、興収が124億5792万8510円。韓国をはじめアジア各国でも大ヒットを記録していて、4月20日にはいよいよ中国でも公開される。北米公開日はまだ未発表だが、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平が今シーズンの登場曲に同作主題歌のThe Birthday「LOVE ROCKETS」を選んだことは、バスケットボールの母国でのヒットに向けた地固めとなるかもしれない。

 ところで、3月24日に中国公開された新海誠監督『すずめの戸締まり』は当然のように初登場1位となった。注目すべきはその数字で、新海監督自身もツイートしているようにオープニング3日間の動員は1000万人以上、興収は3.4億元(約65億円)。改めて中国の映画マーケットの大きさに驚かされるが、この成績は1週前に同じく中国公開された『シャザム!〜神々の怒り〜』のオープニング成績の約12倍、『M3GAN/ミーガン』のオープニング成績の約30倍となる。すごいのは中国の映画マーケットだけじゃなく、同国での新海作品人気、ひいては日本のアニメーション作品人気なのだ。

 昨年末から外国映画の公開を本格的に再開した中国。中国はバスケットボールの人気が高いことでも知られているが、前述したように来月には『THE FIRST SLAM DUNK』が公開される。さらに、今年は中国で絶大な人気を誇る宮﨑駿監督の新作『君たちはどう生きるか』も控えている。

 本コラムで何年も前から継続的に問題提起してきた「日本の国内映画興行におけるハリウッド映画の深刻な不振」については、ようやく一般のメディアでも取り上げられることが増えてきたが、時代はもう次の段階に入っている。今最も注目すべきトピックは、日本だけでなく世界的に競争力を失いつつあるハリウッド映画に比肩する、あるいは凌駕するグローバルコンテンツとして、日本のアニメーション作品が単発ではなく継続的にヒット作を海外マーケットに送り出すことができるかだろう。現状、その見通しはとても明るい。逆に言うなら、日本のコンテンツ産業を支える上でも、日中関係の安定は極めて重要であるということだ。

■公開情報
『すずめの戸締まり』
全国公開中
原作・脚本・監督:新海誠
出演:原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、松本白鸚
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:土屋堅一
美術監督:丹治匠
音楽:RADWIMPS、陣内一真
主題歌:「すずめ feat.十明」RADWIMPS
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
制作プロデュース:STORY inc.
配給:東宝
©︎2022「すずめの戸締まり」製作委員会
公式サイト:https://suzume-tojimari-movie.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/suzume_tojimari
公式Instagram:https://www.instagram.com/suzumenotojimari_official/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@suzumenotojimariofficial

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