『スタンドUPスタート』三星兄弟の勝利で爽快なラスト 大陽が投資した人物の再登場も

 自称“人間投資家”の大陽(竜星涼)が「スタートアップしよう!」と持ちかけたのは、叔父・義知(反町隆史)に三ツ星重工を追い出された兄・大海(小泉孝太郎)だった。そして、これまで大陽が期待と信頼を寄せ再起させてきた面々が一堂に介し、大組織・三ツ星重工と直接対決を仕掛けた『スタンドUPスタート』(フジテレビ系)の最終話。

 三ツ星重工の受注がほぼ確実視されている公共事業の入札に応募し一騎討ちとなるが、結果的には三星兄弟率いる各分野のエキスパート集団が大型受注を見事勝ち取る。

 義知は自身の強力なパイプを持ってして審査員を裏で操り、肝心のプレゼン資料のデータは改ざんだらけ。今まで散々利用してきた三ツ星エネルギーで働く八神圭吾(栁俊太郎)が少しでも不審な動きを見せれば事前にトカゲの尻尾切りと、自身が恨み辛みを抱える兄で三星兄弟の父親である前社長・匡邦(大友康平)なんて比にならぬほどえげつなく、そして一辺倒な手段に出る。人の強さを信じて投資する大陽と、人の弱さを前提に引っ張っていく大海に対して、そもそも誰のことも信用していない義知。

 もしかすると義知は自身が実は憧れ慕っていた匡邦と兄弟間で築けなかった信頼関係を、大陽と大海の間に育まれてしまうのを最も嫌がり、恐れていたのかもしれない。兄に容赦なく無価値な人間と烙印を押された自分の気持ちを、同じように三星兄弟の2人の間で再生産し、追体験させたかったようにも思えた。そう考えると、改めて義知は寂しい人間だ。本当に評価してほしい、自分のことを認めてほしい相手はもう不在で、自身の存在意義や働く意味をとうに見失ってしまっていたのだろう。

 NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)で平清盛(松平健)の三男・宗盛役を好演していた小泉孝太郎。優秀な兄・重盛との比較が常につきまとう宗盛が、それでも自身の役目を実直に務め上げようとする、その矜恃を見事体現していた。本作での役どころとは正反対にも思える立ち位置のキャラクターだったが、両者共に自分のことよりも周囲をどう生かすか考えているところは似通っているのではないだろうか。

 大陽からの協業の誘いに最初から首を縦に振らなかったのは、義知から「手を引かないと大陽くんのことも潰すしかなくなる」と警告されていたからで、それをそのまま伝えずいつだって自身が誤解され悪者になってでも誰かを守ることを第一優先に考える大海の真っ直ぐさを、あのポーカーフェイスで常に一定のローテンションの中に揺るがぬものとして見せてくれたのは見事だった。

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