2023年の“懐かしくて新しい”『シン・仮面ライダー』 庵野秀明ならではの楽しい仕掛け

 『新世紀エヴァンゲリオン』ほか、数々の作品をヒットさせてきた庵野秀明が、企画、監督、総監督、脚本などの要職で関わってきた『シン・ゴジラ』(2016年)、『シン・ウルトラマン』(2022年)に続いて、『シン・仮面ライダー』(2023年)が現在公開中だ。

 もともとこの作品は、2021年4月に開催された「仮面ライダー生誕50周年企画発表会見」の中で明かされたタイトルである。1971年4月にスタートしたテレビドラマ『仮面ライダー』が放送50周年を迎えたことから、3つのプロジェクトが発表された。ここで発表会された3作品のうち、アニメ『風都探偵』と、Prime Videoの配信ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』は、2022年末の時点で両作とも世に送り出されており、『シン・仮面ライダー』は新型コロナウイルスの影響を受けた制作スケジュールの変更で、発表会から2年後の公開になった(最初の超特報で2023年3月公開とされているので、別に現場側の遅延ではない)。仮面ライダー50周年の年にこそ間に合わなかったが、映画ファン、特撮ファン、そして庵野ファンからの注目度は高く、封切り後は賛否両論であろうとも話題のタネが尽きない作品となっている。

『シン・仮面ライダー』超特報

 最初の超特報から5カ月後の2021年9月に公開されたプロモーション映像は、『仮面ライダー』(1971年)のオープニングタイトルを完コピしたもの。オリジナルでは主演の藤岡弘、が歌唱した主題歌「レッツゴー!! ライダーキック」を、ご丁寧に『シン・仮面ライダー』で本郷猛を演じる池松壮亮が歌っているというこだわりよう。本職の歌手ではない故のおぼつかなさも同じで、オリジナル版の再現に懸ける庵野監督の意気込みが伝わってくるプロモーションに、ファンの期待値はますます上がったのだ。 “旧1号”の通称で呼ばれる初代仮面ライダーのスーツを忠実に再現した映像に歓喜の声を挙げた人も多いだろう。

『シン・仮面ライダー』プロモーション映像 A

 順を追って発表される出演者と様々なプロモーション、しかしながら映画の中身は公開まで極秘という秘密主義は、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの頃から変わらない。露出を少なめにして期待感を煽る、一種のじらし作戦でもあるのだが、内容が漏れないようにマスコミ向けの試写が一切なく、公開直前にごく一部の招待者と関係者向けの限定的な試写を数回行っただけである。

 そして、ようやく公開された映画は、緑川博士によって生み出されたバッタの改造人間・本郷猛が、秘密組織SHOCKER(ショッカー)の怪人を次々と倒していく、オリジナル版のフォーマットを守った作りであった。戦う怪人(本作ではオーグと呼ばれる)も、クモ、コウモリ、ハチ、サソリ、カマキリ、カメレオンと、旧1号ライダーの対戦相手と同じモチーフがチョイスされている。愛車サイクロン号で走りながら風圧の力で徐々に変身するスタイルもオリジナル通り。ライダーを演じるアクターを完全にカバーしきれていない、1971年当時のスーツのフィット感と造型を再現し、マスク後頭部下から演者の髪の毛が覗いているのも、原典へのリスペクトだろう。

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