2023.03.20 22:15

『シャザム！～神々の怒り～』北米首位も事前予測に及ばず　DCユニバースの刷新が悪影響

文＝稲垣貴俊

　結果的にワーナーが本作の劇場公開を2023年3月まで延期したのは、『アバター：ウェイ・オブ・ウォーター』との直接対決を避けるためだった。大ヒットが確実視される競合作品との激突を避け、かつIMAX上映を確保する作戦である。確かに筋の通った戦略だが、この決断によって、本作の公開前にDCユニバースの全面刷新が告知される結果となった。予定通り12月に公開していれば、本作に対するファンの注目度は今よりも高いままだったかもしれない。こればかりは、今となっては「もしも」の話でしかないけれど。

　おそらくワーナーは本作の興行を危惧したのだろう、劇場公開の直前には、本国のTVスポットで巨大なサプライズを事前にバラすという賭けにも出ている。このことはデヴィッド・F・サンドバーグ監督も知らされていなかったというが、監督はインタビューで「驚いた」と率直に語りつつ、「多くの人に映画を観てもらうためにやったことだというのはわかっている」と理解を示した。

　それでも、『シャザム！～神々の怒り～』の初動成績は厳しいものに終わったと言うしかない。製作費は1億2500万ドル、宣伝費は約1億ドルと伝えられているため、世界興収6550万ドルという滑り出しでは、劇場公開での黒字化はほとんど不可能だ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア53%（前作は90%）、観客の出口調査に基づくCinemaScoreでは「B+」評価（前作はA評価）とあって、口コミ効果による動員の増加もさほど期待できないだろう。

　実際のところ『シャザム！』シリーズの今後は未知数で、第3作が製作されるかどうかはまだわからない。ガン＆サフランによる新体制は決断を下していないようだし、主演のザッカリー・リーヴァイも「（続編の実現は）観客に観たいと思ってもらえるかどうか」「これが最後にならないことを願っています」と述べた。しかし、観客の需要を測る材料は本作の興行収入であり、その点でもやはり先行きは明るくないのである。

　本作の不調を受け、サンドバーグ監督は掲示板サイト・Redditに自らの見解を投稿。支持と応援を表明するファンたちの声に対し、「心配ないですよ、こうなることは随分前にわかっていたから。大丈夫です、ギャラは前もって支払われているし」とスレスレのジョークで応答した。なお、この投稿はのちに削除されている。

北米映画興行ランキング（3月17日〜3月19日）

1.『シャザム！～神々の怒り～』（初登場）
3050万ドル／4071館／累計3050万ドル／1週／ワーナー

2.『Scream VI（原題）』（↓前週1位）
1750万ドル（-60.6%）／3676館（+1館）／累計7602万ドル／2週／パラマウント

3.『クリード過去の逆襲』（↓前週2位）
1537万ドル（-43.6%）／3477館（-530館）／累計1億2769万ドル／2週／MGM・UAR

4.『65（原題）』（↓前週3位）
580万ドル（-53%）／3405館（変動なし）／累計2242万ドル／2週／ソニー

5.『アントマン＆ワスプ：クアントマニア』（↓前週4位）
407万ドル（-42.9%）／2650館（-455館）／累計2億583万ドル／5週／ディズニー

6.『Cocaine Bear（原題）』（↓前週5位）
387万ドル（-38.1%）／2687館（-517館）／累計5848万ドル／4週／ユニバーサル

7.『Jesus Revolution（原題）』（→前週7位）
350万ドル（-31.8%）／2345館（-165館）／累計4553万ドル／4週／ライオンズゲート

8.『Champions（原題）』（↓前週6位）
303万ドル（-41.2%）／3039館（+9館）／累計1058万ドル／2週／Focus Features

9.『アバター：ウェイ・オブ・ウォーター』（↓前週8位）
192万ドル（-27.4%）／1190館（-485館）／累計6億7811万ドル／14週／20世紀スタジオ

10.『長ぐつをはいたネコと9つの命』（↓前週9位）
151万ドル(-13.8%)／1735館（-81館）／累計1億8259万ドル／13週／ユニバーサル

（※Box Office Mojo調べ。データは3月20日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります）

参照

https://www.boxofficemojo.com/weekend/2023W11/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/shazam-fury-gods-box-office-opening-1235355902/
https://variety.com/2023/film/news/box-office-shazam-2-opening-weekend-stumbles-1235558787/
https://deadline.com/2023/03/shazam-fury-of-the-gods-box-office-bomb-1235303827/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-features/shazam-fury-of-the-gods-director-david-sandberg-wonder-woman-1235355894/
https://comicbook.com/dc/news/shazam-fury-of-the-gods-director-breaks-silence-on-disappointing-box-office-performance/

稲垣貴俊

主に映画・ドラマ・演劇のコラム、レビュー、インタビューなどを執筆・編集。劇場用パンフレット、ウェブメディア、雑誌、展覧会図録などに寄稿・参加。国内舞台作品にもドラマトゥルクとして携わり、主な作品に、PARCOプロデュース『藪原検校』、トライストーン・エンタテイメント『少女仮面』、劇団「木ノ下歌舞伎」作品など。

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