『罠の戦争』杉野遥亮演じる眞人が語る植物ネタの意味 動物との対比にみる作品のテーマ

『罠の戦争』眞人が語る植物ネタの意味

 議員になった鷲津は、眞人に植物の研究に戻りたいなら相談に乗ると話す。ここでも動物と植物の対比は現れているが、政界≒弱肉強食の世界にとどまると決めた眞人の洞察は、より本質を突く内容へと進化する。第6話でミモザの複葉を通して「政治家なんて、みんなつながった同じ1枚の葉っぱ」と言い、第7話でも水生植物のトリビアを語っている。水生植物が進化の過程でふたたび水中に戻ったように、みずから政界の泥沼に足を踏み入れた鷲津は、その暗黒面も取り込むことになった。

 眞人の言葉は鷲津との関係性も示唆している。第5話で、眞人は「サザンカやツバキが冬に咲く理由の一つは他に花が少ないから」「ライバルが減る分、鳥に効率よく花粉を運んでもらえる」と語る。劇中で眞人は、兄・浩輝(森田甘路)の自殺は鷲津の対応が原因であると知らないことになっている。結果的に敵のふところに飛び込む形となり、偶然とはいえサザンカのように鳥(=政治)の力を借りて最速でターゲットに到達した。真相を知らされた眞人が鷲津を許せるか、鷲津が首から落ちるツバキと花びらが散るサザンカのどちらの結末をたどるかは今後の展開次第だ。

 最新話の第9話では、満開の花を咲かせるソメイヨシノが遺伝的に同じ木のクローンであるという豆知識が飛び出した。国会議事堂を背景に語られる言葉は、人が変わっても権力の本質は同じであることを知らせるようだった。権力と縁のない庶民は植物のようなものかもしれない。大地に根を張る植物は、踏まれてもたくましく生き延びる。植物を引用する『罠の戦争』には、言葉にならない思いが込められているのではないだろうか。

■放送情報
『罠の戦争』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:草彅剛、井川遥、杉野遥亮、小野花梨、坂口涼太郎、白鳥晴都、小澤征悦、宮澤エマ、飯田基祐、本田博太郎、田口浩正、玉城裕規、高橋克典、片平なぎさ、岸部一徳ほか
脚本:後藤法子
演出:宝来忠昭
演出・プロデューサー:三宅喜重
プロデューサー:河西秀幸
音楽:菅野祐悟
主題歌:香取慎吾×SEVENTEEN「BETTING」(Warner Music Japan)
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/wana/

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