『星降る夜に』希望を描く一番星のようなドラマに 一星の“おせっかい”が深夜の心を救う

 その先に何を求めて生きればいいのか。きっと虚無感に包まれたに違いない。病院側にミスはなかった。それは最初からわかっていたけれど、何かのせいだと思わなければ到底心の整理なんてつかなかった。何か理由が見つかれば、その恨みをエネルギーに生き続けることができる。その“if”な深夜が、伴(ムロツヨシ)だった。

 1人で抱え込み、行き場をなくした悲しみが、心の時計が進んでいくのを拒むのだろう。まだ立ち上がれない。まだ前になんて進めない……そんな苦しみの中にいる人に、簡単に寄り添うなんてことはできないけれど。それでも、ゆっくりと時間は流れる。そして、いつか伴が素直に妻の死に涙を流すことができたように。鈴と一星のやさしさを受け入れられるタイミングがくる。その姿を見て、深夜の中でも何かが溶けたのだろう。

 そんな深夜と鈴と一星の繋がりを、千明は「太陽と月と地球のような関係」と名付けた。男女と見ると恋とか愛とか名前がつきがちな関係性。でも人と人が繋がり合うのって、もっと自然体なものなのかもしれない。目には見えない力で引き寄せられたり、離れたり、並んだり、満ちたり、欠けたりする星たちのように。

 そのタイミングになれば、またきっと自然と引き寄せられる。だから遠くに行っても近くに感じられる。変わっていくけれど、変わらずにいられる。深夜が「マロニエ産婦人科医院」を離れても、同じ星空を眺めて繋がりあっていくのだと信じられる。

 伴から鈴を守るために再集合したレディース「ピンクエンペラー」もそうだ。犬山(猫背椿)の「元総長」という肩書きがなくなって「ただの犬山さん」になっても、ピンクの特攻服という鎧を脱ぎ捨てても、彼女たちの絆はなくならない。「ポラリス」が拡大して新拠点を開設しても同様だ。その誠実な姿勢はそのままにちょっぴり“おせっかい”に、依頼人に寄り添っていくのだろう。

 そして、一星に失恋した千明の娘・桜(吉柳咲良)と犬山の息子・チャーリー(駒木根葵汰)が付き合い始めたことや、春(千葉雄大)のもとに生まれた命、看護師の麻里奈(中村里帆)の夫が描く作品も、志信(長井短)が推す舞台も……。変わらない大事なものを受け継ぎながら、変わりゆく新しい時代の繋がりを感じられるストーリーが始まっていくに違いない。

 誰もがひとりで悲しみを抱え込まず、まだ名前のつかない関係性で繋がりあって生きていく世界に。『星降る夜に』は、そんな希望を描く一番星のようなドラマだと思った。

■配信情報
『星降る夜に』
TVer、TELASAにて配信中
出演:吉高由里子、北村匠海、ディーン・フジオカ、千葉雄大、猫背椿、長井短、中村里帆、吉柳咲良、駒木根葵汰、若林拓也、宮澤美保、ドロンズ石本、五十嵐由美子、寺澤英弥、光石研、水野美紀
脚本:大石静
監督:深川栄洋、山本大輔
ゼネラルプロデューサー:服部宣之
プロデューサー:貴島彩理、本郷達也
音楽:得田真裕
制作:テレビ朝日、MMJ
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/hoshifuru_yoruni/
公式Twitter:@Hoshifuru_ex
公式Instagram:@hoshifuru_ex

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