『クリード 過去の逆襲』北米No.1、スポーツ映画の歴史を変える 『鬼滅の刃』は初登場4位

 ボクシング映画の金字塔、『ロッキー』シリーズの後継として誕生してから早7年。いまや『クリード』シリーズは名実ともに独立した人気を誇る。最新作『クリード 過去の逆襲』は、3月3日~5日の北米週末興行収入ランキングで初登場No.1を獲得した。

 本作は北米4007館で公開され、3日間で5865万ドルを記録。公開前には3600~4000万ドル程度と見込まれていたため、事前の予測を大幅に上回るロケットスタートとなった。『ロッキー』『クリード』シリーズのみならず、スポーツ映画史上最高のオープニング記録だ。製作費もシリーズ史上最高額の7500万ドルだが、劇場公開のみで黒字化が見込める滑り出しだという。

 シルヴェスター・スタローン演じるロッキー・バルボアの弟子、アドニス・クリードの活躍を描いてきた『クリード』シリーズもいよいよ3作目。かつての親友ダミアン・アンダーソンとの再会と対決を描く物語で、シリーズ史上初めてロッキーが登場しない物語だ。ダミアン役は『アントマン&ワスプ:クアントマニア』で征服者カーン役に抜擢されたジョナサン・メジャースが演じる。

 監督を務めたのは主演のマイケル・B・ジョーダンで、今回が映画監督デビュー。原案・製作には第1作を手がけたライアン・クーグラーが復帰し、脚本はライアン・クーグラーの弟であるキーナン・クーグラー、『ドリームプラン』のザック・ベイリンが執筆した。

 それにしても驚くべきは、初監督にしてみごと高評価を獲得したジョーダンの力量だ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア87%・観客スコア96%を記録。出口調査に基づくCinemaScoreでは「A-」評価となった。スポーツ映画史上はじめてIMAXデジタルカメラを導入する野心も見せており、IMAXシアターでは約26分にわたり画角が広がる。

 観客の男女比は男性63%・女性37%で、年齢層は18歳~34歳が55%と過半数を超えた。人種・民族的にも多様な観客が足を運んでおり、本シリーズがロッキー不在でも幅広い層から大きな支持を受けていることを証明した。口コミ効果も大いに狙えるため、北米最終興収は1億5000万ドル程度との予想だ。

 本作は海外市場でもシリーズ最高となる4180万ドルという初動を記録し、全世界興行収入は1億ドルを早くも突破した。日本公開は5月26日、その真価を観られるのはもう少し先になる。

 ところで、『クリード 過去の逆襲』の北米配給はMGMが担当しているが、同社は2022年春にAmazonに買収されているため、言わずもがな本作もAmazonの管轄。しかし、自社プラットフォームでの配信リリースに業界各社がこだわる中、Amazonだけは自社作品の劇場公開に積極的に取り組んでいる。Amazon Studios製作の『AIR/エアー』も、Prime Videoでの独占配信前に世界規模で拡大公開されるのだ。

 Amazon Studios代表であり、MGM作品も統括するジェニファー・サルケは、自社作品の劇場公開については「個別に検討し、それぞれに適切な判断を下す」との意向。『クリード 過去の逆襲』と『AIR/エアー』を皮切りに「映画館にたくさんの観客を呼び戻していく」と述べているから、見据えるところはNetflixやApple TV+ほか他社とは大きく異なりそうだ。

関連記事