『どうする家康』松山ケンイチ×松本潤が表現した異なる怒り 弱さを受け止め成長する家康

 家康は正信の前でも嘘をつけない。家康がなぜ弁明に来ないのかと正信に問うと、正信はきっぱりと「過ちを犯したのは殿だから」と返した。正信は家康に忖度などしない。歯に衣着せぬ物言いで、心中をぶちまける。

「殿は阿弥陀仏にすがる者たちの心をご存じない」
「仏にすがるのは現世が苦しいからじゃ」
「殿が……お前が、民を楽にしてやれるのなら、だ〜れも仏にすがらずに済むんじゃ」
「民から救いの場を奪うとは何事じゃ、この大たわけが!」

 劇中で描かれた正信の過去からも分かるように、彼もまた、守るべきもののため戦ってきた人物だ。戦いの元凶ともいえる罪を犯した家康に対して、はっきりと怒りをあらわにした。

 そのまっすぐな怒りを前に、家康が見せたのは弱さと強さの両方だった。家康は口を震わせ、「とうに悔いておる……」「わしは……ずっと悔いておる……」と涙を流す。後悔を口にし、めそめそと泣く姿だけを見ると、これまで見てきた臆病で泣き虫な家康と変わらない。けれど彼は三河を束ねる殿として少しずつ成長している。

「だが、この国を立て直さねばならぬ。そのために過ちを全て引き受け、わしは前へ進む!」

 家康は罪を受け入れ、後悔を糧に前へと進む。正信を三河から追放した後も、家康は「わしは…愚かなことをした…わしが守るべきものは……民と……家臣たちであったというのに…!」と自責の念に駆られていた。そんな家康を瀬名(有村架純)が励ます。家康は、自分が目指すべきもの「厭離穢土欣求浄土」を改めて胸に刻んだ。

 松本が演じている家康は、本当に泣いてばかりだが、自分の弱さを理解しているという強さがある。家康が安寧の世をもたらすのはまだまだ先の話だが、第9回はその礎を見た回となった。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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