『夕暮れに、手をつなぐ』のカギは永瀬廉の自然な演技にあり? モノローグに感じる“憂い”

 その上で、永瀬は音というキャラクターに控えめながらもキラッと光る個性を持たせる。特に「世界は僕に冷たい」と感じるそのガラス細工のようにデリケートな音の心のうちが、何かを含むような台詞回しや、慣れない人といるときの所在なげな佇まいから伝わってくる。そんな音のことを、ファッションに目覚めた空豆が働く有名ブランドの同僚は「暗めのイケメン」と称した。確かにその通りなのだが、音が纏う暗さは嫌な暗さではない。例えるなら、どんな哀しみも包み込んで溶かしてくれる、夜空みたいな優しい暗さだ。だから、空豆や、最初は音を騙そうとして近づいたセイラ(田辺桃子)でさえも安心して彼の前では本音をこぼしてしまうのだろう。

 永瀬自身、気後れしそうな眩しさよりもホッとするような静寂をまとっている。その雰囲気が、音や、朝ドラ『おかえりモネ』(NHK総合)の“りょーちん”こと亮のように繊細な心を持つ役に合致するのだ。モノローグを読む声も優しいのだけれど、どこか憂いを帯びていて、雨音みたいに心地よい旋律を奏でる。野生児のようなところはあれど、実は胸の内に色んなことを抱えた空豆にとっても、その“音”は必要だった。二人が一緒に暮らせる最後の日が刻一刻と近づいているが、果たして空豆は音がいない生活に耐えられるのだろうか。

■放送情報
火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:広瀬すず、永瀬廉(King & Prince)、川上洋平([Alexandros])、松本若菜、田辺桃子、黒羽麻璃央、伊原六花、内田理央、櫻井海音、茅島成美、酒向芳、遠藤憲一、夏木マリ
脚本:北川悦吏子
演出:金井紘、山内大典(共同テレビジョン)、淵上正人(共同テレビジョン)
プロデューサー:植田博樹、関川友理、橋本芙美(共同テレビ)、久松大地(共同テレビ)
編成:三浦萌
制作協力:共同テレビジョン
製作著作:TBS
©︎TBS
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