『舞いあがれ!』八木莉可子が“清らかな不穏さ”を巧みに表現 適応力で成り立った史子役
しかし、彼女はたおやかなばかりではない。貴司の短歌にダメ出しをするリュー北條には啖呵を切ってみせるし、舞に対しては自分が貴司にとって特別な存在であることをさらりと告げている。前者の八木の演技は身体をともなった“動的”なもので、後者は声の調子だけでそっと訴える“静的”なもの。頼もしい反面、これまで舞とともに時間を過ごしてきた視聴者からすれば、恐ろしくもある。八木はこのタイミングで本作に、清らかな不穏さを持ち込んだのである。
そんな八木莉可子が朝ドラに出演するのはこれが初めてのことだ。デビューから間もない2016年に出演した「ポカリスエット」のCMで彼女の存在を認知した方が多いと思うが、俳優業が活発化してきたのはこの数年のこと。高校を卒業したのが大きいのだろう。倉悠貴、三浦透子、清水尋也ら次代を担う若手俳優が揃った群像劇『スパゲティコード・ラブ』(2021年)で映画出演を果たし、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年/NHK総合)にも登場。現在はNetflixオリジナルドラマ『First Love 初恋』で満島ひかり扮するヒロインの若き日を好演しているのが話題である。『舞いあがれ!』への出演は、彼女の俳優活動において確実に次のステップに繋がるものだろう。
『舞いあがれ!』八木莉可子抜擢の理由をCPが明かす 「切実な思いが彼女の中にはある」
『舞いあがれ!』(NHK総合)第19週より、舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)の間に突如として秋月史子(八木莉可子)が現れた。 …
さて、“八木莉可子=秋月史子”は悪役ではない。ヒロイン・舞のさらなる一歩を促すキャラクターになっていくはずである。彼女が持ち込んだ“清らかな不穏さ”は、今後どのように物語に影響し、変わっていくのだろうか。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
2022年10月3日(月)から 2023年4月1日(土)まで
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK