川島は、このようなクセのある役を演じることも多いが、実直な人物としての好演も光る。『エール』では、戦前の日本を代表する作曲家だった小山田耕三（志村けん）の付き人・猿橋重三を演じた。小山田は、『エール』の主人公である古山裕一（窪田正孝）に働き口を与えた恩人でもあったが、一方で裕一を冷遇している面もあった。それは裕一の才能に嫉妬し、作曲家としての自分の地位が脅かされるのではないかと恐れてのことだったのだが、死去の直前、裕一に謝罪とその才能を讃える手紙を残していた。それを裕一に届けたのが猿橋だったのである。猿橋は小山田との日々を懐かしむように「いつも先生の前ではしかめっ面でしたが、笑顔は子供みたいにチャーミングです」と語り、裕一に小山田の行動を謝ったのだった。

　「自分の中の本当の気持ちに向き合ってみてよ」という言葉は、リュー北條から貴司に向けられたものだが、時を同じくして、舞も久留美から同様のことを言われている。そして、新しい1週間が始まった、『舞いあがれ！』第20週のタイトルは「伝えたい思い」。リュー北條が軽く言ったこの言葉は、貴司や舞には重く響き、今週のキーワードとなるようだ。繊細な貴司にあまり無理難題を吹っかけないでほしいと思ってしまうが、リュー北條は貴司にどんな影響を与えるのだろうか。舞と貴司、さらには史子との関係性にも注目しながら見守っていきたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ！』
2022年10月3日（月）から 2023年4月1日（土）まで
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
出演：福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作：桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽：富貴晴美
主題歌：back number 「アイラブユー」
制作統括：熊野律時、管原浩
プロデューサー：上杉忠嗣
演出：田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地：東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供＝NHK