『舞いあがれ!』松尾諭の“ダメ父”役にみる演技の凄み 自然な佇まいが生み出す親近感

 おおよその人が「ドラマ・映画で一度は観たことがある」と断言できるほど、数多くの作品に名を連ねている松尾。映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』(2022年)、ドラマ『PICU 小児集中治療室』(2022年/フジテレビ系)のほか、NHK朝ドラにいたっては『てっぱん』(2010年後期)、『ひよっこ』(2017年前期)、『わろてんか』(2017年後期)、『エール』(2020年前期)と出演。また、彼のエッセイ『拾われた男』(文藝春秋)が仲野太賀主演で2022年にドラマ化されたことも記憶に新しい。

『舞いあがれ!』『ひよっこ』松尾諭の安心感 『拾われた男』から“朝ドラの常連”へ

『舞いあがれ!』(NHK総合)で、ヒロイン・舞(福原遥)の幼なじみ、望月久留美(山下美月)の父親・佳晴を演じている松尾諭。妻に出…

 一般的に松尾のような有名バイプレイヤーは「個性派」として認識されている。確かに、演技、雰囲気、間(ま)、台詞回しなど見ていても個性的だが、武器はそれだけじゃない。松尾を見ていると感じる「親近感」に似た感情は、彼にしか生み出せないものだと思う。安心して演技を観ていられるだけでなく、彼の佇まいや空気感がごく自然で「自分の生活圏内にいそう」と感じてしまうのだ(もちろん物語の設定にもよるが)。簡単そうに見えて、これが一番難しい技術ではないだろうか。

 思えば『舞いあがれ!』の佳晴もそうだ。近所にいそうな、あるいは同級生の“おっちゃん”にいそうな、松尾の佇まいと演技力が本作に安定感をもたらしている。だからこそ、二十数年のキャリアの中で、本作含めて5作もの朝ドラに出ているのだろうし、ドラマ・映画と引く手あまたな状態が続くのだろう。

 さて、佳晴は久留美の結婚にどう関わってくるのか。これまで見捨てることができたのに、父親を一人っきりにさせなかった久留美。彼女への恩返しのためにも、最後は佳晴が娘を支える立場になって、逆転のトライを決めてほしい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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