『女神の教室』北川景子と山田裕貴の掛け合いが核に 青春群像劇としても最適解の見せ方
青南ローの構内で倒れて運ばれていった卒業生が、藍井(山田裕貴)から冷たい言葉を投げかけられていたと知る柊木(北川景子)。実務的なことを教えつつ、法に携わるものとしての倫理を学生たちに教えようとする柊木と、司法試験に合格するノウハウだけを叩き込もうとする藍井。教員として正反対な両者の掛け合いは、コーヒーのサイズひとつとっても“正対正”の関係を崩すことなく、このドラマの核となるものを固め、同時にユーモアというポップさを与える。とはいえ柊木が授業で学生たちに説く内容は、ローで教えるものというよりも大学の法学部の導入で教えるようなものであることは否めないのだが。
1月16日に放送された『女神の教室〜リーガル青春白書〜』(フジテレビ系)第2話。学院長の守宮(及川光博)に言われて、柊木と藍井の2人で受け持つことになった「実務演習」の授業を通し、受講する5人の学生たちの変化を辿っていくというのがこのドラマの見せ方なのであろう。前回のような模擬裁判という比較的わかりやすい見せ場を用意せずとも、それぞれの学生が抱えるバックグラウンドに触れることでストーリーに動きが加えられる。ここで近年のドラマによくみられる、ひとりの物語に1話を費やす方法を取らない点は好感触である。
毎日授業の後にバイトを掛け持ちし、友人から借金してでもローに通う苦学生の水沢(前田拳太郎)に、弁護士である父親からローを辞めるよう言われてしまう天野(河村花)。自分の将来なりたい職業さえも修正テープで消してしまう桐矢(前田旺志郎)と、成績が伸び悩んでいる3名のなかに芽生える小さな変化を、この第2話のなかで一気に見せる。もちろん周囲と一線を引く優等生の照井(南沙良)や、実務演習が学院長きもいりの授業であると知って前のめりになる打算的な真中(高橋文哉)についてもぞんざいにせずに描くのだから青春群像劇の見せ方として正しい。
さて、今回のエピソードで主要な課題として検討が進められたのが「入れ墨をした者の銭湯の利用」についてであり、これは現実世界においてインバウンド需要が大きく期待されていた数年前ごろからよく取り沙汰されるようになった問題だ。入れ墨をした男性Xが銭湯の店主に入店を拒否されて揉み合いになった末に怪我を負わされ、1000万円の損害賠償を請求したことが妥当であるか否か。照井や真中はすぐに「1000万円」という金額に難色を示し、「自分が依頼されたら?」という柊木の問いかけに「断る」という選択をするのだが、学生たちは改めて課題を再検討して意見をまとめ、柊木たちにぶつけるのである。
劇中でも取り上げられていたように、平成29年の国会において当時民進党の議員から提出された質問主意書に対して、公衆浴場法で入浴を拒否することができると定められた「伝染病の罹患者」、あるいは管理者が制止することができる「公衆衛生に害を及ぼす虞のある者」に入れ墨があること“のみ”をもって「該当すると解することは困難である」と答弁した内容が閣議決定している。閣議決定をもって法的根拠とするべきではないが、彼らがそこから見出す、端的に言えば“ケースバイケース”といえるその結論は、このドラマの主眼となる“想像力”という点に結びつける上で妥当であろう。「多少不便でも、誰かと生きるというのはそういうことではないでしょうか」。この言葉にそれは集約されているといえよう。
■放送情報
『女神の教室~リーガル青春白書~』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:北川景子、山田裕貴、南沙良、高橋文哉、前田旺志郎、前田拳太郎、河村花、佐藤仁美、宮野真守、小堺一機、尾上松也、及川光博
脚本:大北はるか、神田優
プロデュース:野田悠介
演出:澤田鎌作、谷村政樹
音楽:武部聡志
主題歌:Vaundy「まぶた」(SDR)
法律監修:水野智幸(法政大学大学院法務研究科)
制作・著作:フジテレビジョン
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