『DOCTORS』は森山卓の成長物語 沢村一樹VS髙嶋政伸の喧嘩をもっと観ていたい

 相良を演じる沢村一樹は、コメディドラマ『サラリーマンNEO』(NHK総合)ではセクスィー部長のイメージが強くコメディもできて、トークでは下ネタも披露する、カッコ良くて面白い俳優という位置づけだった。『DOCTORS』の相良には、そんな沢村のイメージがフィードバックされている。患者のことを一番に考える正義感あふれる優しい医師だが、同時に腹黒い戦略家で、森山の嫌がらせをどこか楽しんでいるような余裕もある。

 最終的に自分にとって利益のある方向に状況を持っていく姿は、いわゆるスーパードクターの役からは大きく逸脱しており、医療現場を明るく楽しい祝祭空間に変えてしまういたずらっ子のようだった。

 一方、森山卓を演じる髙嶋政伸は、高島忠夫と寿美花代の次男で長男は髙嶋政宏という芸能一家の生まれで、デビュー直後から2000年代にかけては長身の好青年という爽やかなイメージを打ち出した若手俳優として『HOTEL』(TBS系)などの作品で活躍。

 転機となったのは『DOCTORS』と同じ年に出演した『冬のサクラ』(TBS系)だ。本作で髙嶋は、逃げた妻を追いかける気持ち悪い夫を演じ、新境地を開拓。

 『DOCTORS』と同じ医師役だったが、この2作で髙嶋のイメージは大きく変わった。今の髙嶋は、善悪どちらもイケる怪優だが、『DOCTORS』を観た時は、好青年としての髙嶋の「観てはいけない裏の顔」を観てしまったような気持ちになり、目が離せなかった。同時に森山卓には黒いユーモアもあり、俳優としての幅を一気に広げたと言えるだろう。

 沢村一樹にとっても髙嶋政伸にとっても、その後の俳優としてのキャリアを決定づけた当たり役となったドラマだったため、今回で“ファイナル”となるのは、若干寂しくもある。またいつかどこかで、相良と森山が仲良く喧嘩する姿が観たいものである。

■放送情報
『新春ドラマスペシャル DOCTORS~最強の名医~ファイナル』
テレビ朝日系にて、1月3日(水)21:00〜放送
出演:沢村一樹、髙嶋政伸、比嘉愛未、黒川智花、宮地雅子、正名僕蔵、滝沢沙織、敦士、斉藤陽一郎、尾崎右宗、阿南敦子、浅利陽介、 小田将聖(少年忍者/ジャニーズJr.)、菅野美穂、石田ひかり、松坂慶子、小野武彦、伊藤蘭、野際陽子
脚本:福田靖
音楽:林ゆうき
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
チーフプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、松野千鶴子(アズバーズ)
監督:本橋圭太
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
©テレビ朝日

関連記事