『エルピス』が描く男性同士の連帯 “トキシックマスキュリニティ”を脱する手がかりに

 またその後に描かれる岸本と亨の通話シーンでは「あなたは1人ではない」という精神的な支えを行うシーンもあり、トキシックマスキュリニティやホモソーシャルから脱した男性同士の心地よい連帯を感じた。本作にはほかにも“連帯”とは異なるが、間違った方向へ突き進みそうになっているキャラクターに「引き返すならこれが最後」と助言したり、自身の凝り固まったプライドを捨てて志を後輩へ受け継ぐことなどを男性同士のみで行う姿が描かれている。男性同士がケアし合うことが難しいとされる世の中で、こうしたやり取りに女性キャラクターを登場させず描いているのが、本作が優れた作品だと評価される1つの要因になっているのだろう。

『エルピス』は「何を渡せるかが勝負」 佐野亜裕美Pが語る、物語に込めた実体験の空気

実在する複数の事件から着想を得て制作された社会派エンターテインメント『エルピスー希望、あるいは災いー』(カンテレ・フジテレビ系/…

 強固な男社会において、権力を持つ男性に力を持たず後ろ盾もない男性が立ち向かうことはとても難しい。それは男性優位な社会構造やそこに組み込まれないと男として一人前と認められない社会構造に問題があるからだが、それでもなおトキシックマスキュリニティやホモソーシャルから外れ、「そんな構造は間違っている」と行動を起こしている男性もいる。そうした男性を掬い上げて描いているのが本作であり、だからこそ本作が多くの視聴者から支持される理由の1つでもあるはずだ。これから先、決めつけられた男らしさから外れた男性たちが心地よく連帯するためのエンパワーメントになるような作品が、『エルピス』をきっかけに制作されることを願ってやまない。

■放送情報
『エルピスー希望、あるいは災いー』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平ほか
脚本:渡辺あや
演出:大根仁ほか
音楽:大友良英
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作協力:ギークピクチュアズ、ギークサイト
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/elpis/
公式Twitter:@elpis_ktv

関連記事