ふと、俳優・赤楚衛二の顔を思い浮かべてみた。

　あくまで私の場合だが、クシャッとした笑顔だったり、歯を出してニコッとしたり、口角を上げて微笑んでいたり、笑っている顔が思い浮かんだ。あなたはどうだろうか？　人によってはクールな表情をしていたり、どこか寂しそうな顔をしていたり、それぞれ彼に対するイメージがあるだろう。

　そうやって意見が分かれるほど、赤楚は映画やドラマでさまざまな役柄を演じてきた。彼の最大の特徴は、そうした作品に携わる中で、視聴者の心をつかんできたことだ。赤楚が演じた役は応援したくなるし、一緒に泣くし、一緒に笑うーー。

　赤楚にとっても、彼のファンにとっても、どの役も宝物で、出演した作品が一つでも抜けていたら「今の赤楚衛二はいない」と思うだろうが、まずは特撮ファンを唸らせた『仮面ライダーアマゾンズ Season 2』（2017年／Prime Video）の長瀬裕樹役と『仮面ライダービルド』（2017年／テレビ朝日系）の万丈龍我役に触れておきたい。すでに放送から約5年となるものの、いまだに彼を見かけると反応する特撮ファンがいるし、近年彼を知った人は、動画配信サイトで当時の赤楚を堪能している。彼が俳優を続けるうえで、ひとつの分岐点となった作品に違いないだろう。

　「赤楚の出世作」と紹介されることもあるのが、今春映画化された『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』（2020年／テレビ東京系）だ。

　本作にて赤楚は、童貞のまま30歳を迎えたことで「触れた人の心が読める魔法」を手に入れた主役・安達清を演じた。同期のエリートイケメン・黒沢優一（町田啓太）からの“好意”がダダ漏れで、安達は戸惑いっぱなし。やがて2人の関係は、より深くなっていく……。オドオド男子だった安達が成長していく姿、「カッコいい」だけじゃない黒沢の内面が見え隠れするシーンなど、2人のやりとりと繊細な演技は多くの視聴者の心をつかみ、ネット上で「#チェリまほ」現象を巻き起こした。

　2021年には、ゴールデン帯の連続ドラマ『彼女はキレイだった』（カンテレ・フジテレビ系）樋口拓也役、『SUPER RICH』（フジテレビ系）春野優役と主要キャストを2クール連続で演じた赤楚。同じフジテレビ枠で恋愛も絡んでいく内容ではあったが、樋口と春野とそれぞれ違った人物像を見事に演じ分けた。

　そして2022年。のちに「ギャラクシー賞9月度月間賞」を獲得することになるドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます？ー』（TBS系）にて、物語に深く絡んでいく大庭蒼生を演じたかと思えば、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ！』では、ヒロイン・岩倉舞（福原遥）の隣に住む幼なじみ・梅津貴司を熱演。柏木弘明（目黒蓮）と対峙した際には「イケメン同士の共演だ」と視聴者が歓喜した。