佐々木蔵之介が使い分ける二面性 『クロサギ』平野紫耀との対決がヒートアップ

 “クロサギ ”こと黒崎(平野紫耀/King & Prince)の家族の仇である真の敵――ひまわり銀行の執行役員・宝条(佐々木蔵之介)との直接対決がますますヒートアップしている『クロサギ 』(TBS系)。

 「銀行員」「金融のプロ」という絶大なる信頼感に支えられている “表の顔”と、詐欺界のフィクサー・桂木(三浦友和)のマネーロンダリング係まで担う“裏の顔”を巧みに使い分け、銀行内でも独裁政権を築いている宝条。その“宝条帝国”の力は銀行内外にも及び、裏金作りのための資金源を複数抱えている。

 目をかけていた支店長が黒崎の術中にはまると、 「本店を胴体とするならば手足の支店だけで跳ね上がった泥を払えば身体までは汚れない」と容赦なくあっさりと切り捨てる。顔色ひとつ変えず、迷いなく行うトカゲの尻尾切りに宝条の底知れぬ恐ろしさが漂う。血も涙もなければ隙もなく情けもない一方で、一見したところ温和で人当たりも良く家ではまさに“良い父親”までそつなくこなす宝条の二面性を佐々木が矛盾なく見せてくれている。

 宝条のように少しの綻びも許せず、完璧主義で選民意識を匂わせる役と言えば、『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)で演じた橘高勝役が思い出される。自身の咄嗟の判断ミスが許せず認められず、それを隠すためにさらなる罪の上塗りを重ねる潔癖症の何とも息苦しそうな人物像を見事演じ上げた。何だか彼が貫こうとする“正しさ”が嘘臭く白々しくも感じられ、潔白さが翻って怪しく秘密めいた雰囲気を醸し出すような、そんな逆説的な橘高の独特で歪な存在感を自然に立ち上らせていた。ただ、橘高の罪を淡々と告白した後に堰を切ったように溢れ出す涙には皮肉なほどに人間味が宿っていた。

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