本田翼と高橋文哉の選択は? 『君の花になる』で考える、“推し”と“ファン”の関係

「花丸なんてついてなくても、俺にとってあんたはずっとずっと最高だから!」

 TBS系火曜ドラマ『君の花になる』は、元高校教師のあす花(本田翼)が7人組ボーイズグループ「8LOOM」の寮母となり、一緒に“トップアーティスト”になる夢を追いかけていく物語だ。

 第7話では、あす花が教師を辞めた理由が明らかに。無理をしてでも過去のトラウマを克服し、自分に花丸をあげようとする彼女に8LOOMのリーダーである弾(高橋文哉)は冒頭の言葉を贈る。この台詞から、「推し」と「ファン」の関係について考えてみたい。

 近年、「推し」という言葉は急速に広がりを見せている。「推し」とは、一推しのメンバーを意味する“推しメン”を略したもの。1980年代頃から使われ始め、2000年代に入ってからモーニング娘。やAKB48などの女性アイドルファンの間で定着していったと言われている。つまり、もともとは複数人からなるアイドルグループ内で最も応援しているメンバーのことを指していたのだ。

 しかし、近年は「推し」という言葉が使われる対象は多様化しており、アイドルだけではなく、俳優、声優、アーティスト、偉人などの「実在する(または、した)有名人」、アニメや漫画、ゲームなどに登場する「二次元のキャラクター」、学校や職場などにいる「身近な人」から、乗り物、建物、動物など「人以外のもの」まで、何でもありになってきている。いまや「推し」とは、あらゆる万物が存在するこの世界で、最も好きな人やものを指す言葉になりつつあるのかもしれない。

 とはいえ、単純に“好きな人やもの”と言われたらちょっと違和感がある。尊敬や憧れ、共感、恋愛感情、母性・父性など、そこには色んな感情が複雑に入り組んでいて、むしろ単純に“好きな人やもの”と言えないからこそ、「推し」という言葉を多くの人は使っているような気がするからだ。じゃあ、あえて今、「推し」という言葉を再定義するなら?

 その答えを一つ与えてくれるのが、『君の花になる』における8LOOMとあす花の関係だ。あす花はもともと弾が通っていた高校の教師で、「みんなをちょっと元気にできるお花みたいな先生になる」のが夢だった。当時からアーティストを目指していた弾は、生徒たちの前で堂々と夢を語り、自分の夢も全力で応援してくれるあす花の存在に励まされる。だが、あす花はさまざま出来事に追い詰められ、心を病んで教師を辞めた。

 そんな事情を知る由もない弾は当初、あす花に対して辛く当たる。「夢を追う同志だと思っていたのに!」という憤りを抑えきれなかったのだろう。でも、「寮母としてみんなのこと全力で応援して、自分に花丸つけられる人になる」と新たな目標を掲げたあす花に、弾は「あんたの夢も俺が叶えてやる」と誓うのだった。

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