清原果耶の意味深な涙 『invert 城塚翡翠 倒叙集』正義が悪に反転した殺人事件

 『invert 城塚翡翠 倒叙集』(日本テレビ系)第2話は、本シリーズのキャッチコピー“すべてが、反転”を体現した回だった。

 まず、本作は“倒叙集”のため、犯人が先に明かされる。第2話で殺人を犯したのは、小学校教師・末崎(星野真里)。元公務員・田草の盗撮被害に遭った彼女は、自分の身を、そして生徒の安全を守るために田草を殺害した。

 人殺しをしたのにもかかわらず、末崎は「私は、正しいことをした」と言い張る。たしかに、田草は最低な人間だった。教師や生徒の安全を脅かした上に、立場の弱い者を脅迫する。野放しにしていたら、いけない。もちろん、何かしらの罰は受けるべきだ。しかし、末崎がその罰を与えるべきではなかった。

 正直なところ筆者は、“もったいない”と思ってしまった。末崎の訴えを聞いていると、悔しくなった。なぜなら、人を殺めた瞬間に、“正義”側に立っていた者が、“悪”へと反転してしまうのだから。末崎に、どんな正義があったとしても、関係なくなってしまう。他人は、“人を殺した”という事実だけを見る。そこに、どんな悲しいバックストーリーがあったとしても、誰も同情などしてくれない。

 もっと、別の方法はなかったのだろうか。殺人を犯した“その後”を考えて、立ち止まることができなかったのか。大好きだった先生が、人殺しだったと知った時、まだ幼い生徒たちはどう思っただろう。末崎の正義が、もっと違うベクトルに向けられていたら。そうすれば、また“特製のシャボン玉”にはしゃぐ生徒たちの姿が見られたはずなのに。

 正義を主張する末崎を制する翡翠(清原果耶)の言葉も、心に突き刺さる。「人の命は、たった一度だけです。私たちの命も、とても儚くもろいのです。だからこそ私は、独り善がりな殺人を許しません。人を殺したら、必ず報いを受けるのだと、罪を償うべきなのだと……。そのルールを徹底して知らしめることでしか、私たちは殺人という暴力から命を守れないのです」

 そう言って、大粒の涙を流した翡翠。やはり、彼女の過去には、“何か”がある。大事な人を、殺されてしまった過去だろうか。それとも、鐘場警部補(及川光博)の姪だという線は、間違っていないのだろうか。となると、親戚を無差別に殺された過去があるということになり、身の危険をおかしてまで、殺人犯を捕まえようとするのも辻褄が合ってくる。鐘場警部補が、「あいつ(=翡翠)は“昔から”、そこにどんな理由があろうが、ぜってぇに殺人を許さねえんだ」と言っていたのも、気になるところだ。

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