『silent』成功の秘訣は親世代? 篠原涼子、風間俊介ら純愛を見守る大人たち

 2022年のエポックとなった『silent』(フジテレビ系)。目黒蓮と川口春奈を中心に、鈴鹿央士、夏帆らが織りなす言葉と感情の繊細なやり取りが新鮮な驚きを与えている。価値観が多様化した2020年代にあって、純愛を描いた『silent』が快進撃を続ける裏には、若者たちの恋愛を見守る大人キャラの存在がある。

 同世代の交流を描くことの多い恋愛群像劇で、世代の異なる登場人物は脇役あるいは添え物的な扱いをされるのが通例だ。これに対して、『silent』に登場する大人世代のキャストは、物語を担う不可欠なピースとしてさりげなく最大限の効果を発揮している。

 ドラマ序盤の湊斗(鈴鹿央士)が想(目黒蓮)と再会し、聴力を失ったことを知るシークエンスでは、元担任の古賀(山崎樹範)が重要な役割を果たす。サッカー部の元顧問で、古賀の経営するフットサルコートはOBのたまり場になっており、想や湊斗と連絡を取る古賀は、2人が再会して距離を縮める上でリンクとして機能する。第1話で、古賀は想の身に起こったことを知っているが、そのことを伏せて湊斗の話を聞く。教え子の人間関係に介入しない古賀は誰よりも想や紬のことを心配していて、連絡を絶っていた想がかつての仲間とボールを蹴る姿を目にした時は思わず号泣するほどだった。

 元教師の古賀は教え子を導く役割も担っている。第5話で、自分のせいで紬と湊斗が別れたのではないかと気に病む想に、古賀は、かつて想自身が紬を一方的に振ったことを指摘し、それにもかかわらず紬と湊斗の関係に口を差し挟むのは筋違いであることを端的に「ダサい」と伝える。子どものままでは駄目だと言ってくれる大人は貴重である。想が聴力を失ってからの8年間で紬や湊斗はそれぞれ別の人生を歩んでおり、古賀の言葉は止まっていた想の時計の針を動かす意味合いがあった。

 想の周辺で、母の律子(篠原涼子)ほど想を気にかける人間はいないだろう。想が湊斗や紬たち高校時代の友人とつながることを律子は心配し、過去の辛い出来事を忘れられるように願っている。律子の深い悲しみは、進学する息子を見送る第2話の回想シーンで克明に描写されているが、どうして自分の息子がという嘆きと、代われるものなら代わりたいという親ならではの感情が全身からあふれていた。近親者では妹の萌(桜田ひより)も想が置かれた立場の難しさや苦しみを身近で知っているが、萌が何かにつけて出すぎてしまいがちなのに対して、律子は想の思いを尊重し静観している。そんな態度が長女の華(石川恋)に「お母さんは想の本音が聞きたいのに、私たちばっかしゃべってごめんね」と揶揄される原因にもなっているのだが、想が絶望的な時間をやり過ごすことができたのは、律子の支えがあったためであることは間違いない。

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