『舞いあがれ!』山下美月&赤楚衛二を通して考える、“自分の言葉を伝える”ことの重要さ

 『舞いあがれ!』(NHK総合)第7週「パイロットになりたい!」は、家族それぞれの物語だ。舞(福原遥)の岩倉家、久留美(山下美月)の望月家、貴司(赤楚衛二)の梅津家、さらに五島の祥子(高畑淳子)とめぐみ(永作博美)、浩太(高橋克典)がそれぞれ言えずに心の奥に閉まっていた思い。それはこの物語が始まった当初から変わらない、自分の気持ち、自分の言葉を伝えるという脚本の桑原亮子が一貫して描いてきた姿だ。

 「重いもんをしっかり背負って飛べる人になりたい」という新たに見つかった夢である旅客機のパイロットへの思いをめぐみと浩太に伝えた舞。その頃、久留美も福岡に住む母・久子(小牧芽美)と10年ぶりの再会を果たしていた。焦点になるのは、8歳の頃、なぜ母は久留美を置いて家を出ていったのか。そこには会社を辞め、無気力になっていく父・佳晴(松尾諭)の存在があった。自分がいたらこの人はダメになっていくと判断した久子は久留美を連れて福岡の実家に帰る決断をしたが、そこで久留美は佳晴といることを選択した。

 久留美の行動の真意は、母に戻ってきてほしかった、家族を繋ぎ止めたかった。今も家族は離れたまま、佳晴も更生できずにいる。「たまにしんどいねん」「私、幸せになれるんかなぁって」と本音が漏れる久留美。だからといって、また久子が大阪に戻っても、10年前と同じさらに酷い状況になるのは目に見えている。だから今は、金銭面でも、健康面でも父を支えられる母と同じ道の看護師に。縛られた家庭環境の中で、時に挫けそうになりながらも、わずかな光を頼りに父が、家族が元に戻ることを信じる、久留美の覚悟が詰まったシーンだ。

 大阪の「うめづ」に帰ってきた貴司。母・雪乃(くわばたりえ)の願う「普通に幸せに」という思いもまた彼の心をがんじがらめにしていた。「旅しながらその土地で働いて、自分の居場所を探したい」という貴司に、父・勝(山口智充)は「お前のこと分かりたい」と理解を示す。自宅ですらも「居場所」だと思えず、古本屋の「デラシネ」を拠り所としていた貴司。雪乃に対して、どちらかと言えば放任主義な勝との夫婦のバランスが、貴司にとっては救いだったのかもしれない。

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