『舞いあがれ!』福原遥と重なる若き日の永作博美 大団円を迎えた“母と娘”のドラマ

 我が子の話にめぐみと浩太は、じっと耳を傾ける。夢を持って働く両親を見て育った舞は、「私も大変な思いして働くんやったら、自分がほんまに好きな仕事をやりたい」と思うようになった。舞の「お願いします。航空学校に行かせてください」に、めぐみはしばし沈黙する。若い頃の自分を重ね合わせていたのかもしれない。ひと呼吸置いて、観念したように「わかった。舞がそこまで考えてんのやったら、やってみ」と言ってほほ笑んだ。めぐみはおそらく、舞の決意が堅いとわかっていたはずだ。わかっていて母親として精いっぱい務めを果たそうとしたのだろう。結果的に我が子の巣立ちを見届け、めぐみ自身も子離れすることになった。

 めぐみと舞を見つめる祥子の胸中にも、これまでの月日が去来したのではないか。かつての自分を重ねながら、祥子は何を思ったのだろう。親がいなくても子は育つこと、娘を追いやってしまった後悔、それ以上に、孫の舞を連れて戻ってきてくれた感謝であふれていたと推察する。

 祥子が9歳の舞を預かっていなければ、舞は自分の気持ちを話せるようにならなかった。めぐみと舞を引き離した荒療治は、舞を自立させた一方で、めぐみの心に傷を残しただろう。めぐみにとって、舞と向き合うために五島に来たことは、母親としての自分を取り戻す意味合いがあった。舞の夢を受け入れることで、めぐみ自身も長年の不安から解放された。それは祥子を許すことと表裏一体で、一抹のほろ苦さとともに愛情で満たされるものでもあった。空に憧れる舞が、祥子とめぐみを本来の母と娘に戻したのだ。

 『舞いあがれ!』第1週のタイトルは「お母ちゃんとわたし」だった。母と娘の葛藤を描くドラマは、30数話をかけて、大きな円を描くようにあるべき場所にたどり着いた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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