『舞いあがれ!』山下美月の喜怒哀楽表現が素晴らしい 久留美の吐露が舞を動かす

 『舞いあがれ!』(NHK総合)第6週「スワン号の奇跡」ラストで、舞(福原遥)はついにめぐみ(永作博美)と浩太(高橋克典)に「旅客機のパイロットになりたい」という新たな夢を打ち明ける。

 スワン号で琵琶湖の空を飛んだことを機に、飛行機への憧れはいつしかパイロットとして空を飛ぶことに変わっていった舞。この頃、旅客機の女性パイロットとして成功した人は日本にはまだいなかったこと、希望する航空学校に合格した際には今の浪速大学を中退することに加え、浩太の舞が作った飛行機に「株式会社IWAKURA」で製作した部品を乗せるという夢も潰えることになってしまう。舞は後ろめたさを感じ、ずっと両親に新たな夢を言い出せずにいた。

 それでも舞が意を決して2人と向かい合おうとしたのは、久留美(山下美月)の「言わんと我慢してたら何も変われへんもんな」という言葉がきっかけにあった。看護専門学校に通いながら、放課後はカフェ「ノーサイド」でアルバイトをして、家計を支えている久留美。子供の頃から父子家庭で育った彼女は、アルバイトもある中で必死に勉強をして特待生選考試験に合格。2年目の学費免除となった。嬉しさのあまり、木村カエラの「リルラリルハ」を鼻歌に帰宅する久留美。だが、そこで待っていたのはやっと見つけたガードマンの仕事を辞めた父・佳晴(松尾諭)の姿だった。怪我を機にラグビー選手をリタイヤした佳晴は、非常階段で足を滑らせて捻挫。真っ暗な部屋で塞ぎ込んでいた。どこか素直ではない佳晴は、ラグビーボールをクルクルと回しながら「なんとかなるやろ」と楽観的な一言をつぶやいてしまう。続けて口から出てくるのは「お前はあいつと一緒に行ったらよかったんや」という意気地のない言葉。久留美もまた父に罵声を浴びせ、怒りのあまり家を飛び出していく。

 辿り着いたのは舞の家。途中で雨が降り出してきたのだろう。ずぶ濡れの久留美をめぐみが温かく迎え入れる。舞と久留美はその性格も、家庭環境も対照的だ。旅客機のパイロットになりたいという夢を母に言い出せないという舞に「贅沢な悩みやな」と本音が漏れた久留美には、金銭的な悩みと母がいない家庭的背景がある。久留美にとっては舞の岩倉家が幸せな家庭として羨ましく思う存在にあるのだろう(岩倉家としては家に帰ってこない兄・悠人(横山裕)の問題がある)。

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