『カムカム』ファンなら見逃せない! 濱田岳主演『探偵ロマンス』は心躍る名作になる予感

 とりわけ、『カムカム』は観る人の視覚と聴覚に訴えかける演出が印象的だ。安子が稔(松村北斗)の訃報を受け、神社へと駆けていくシーンや、原因不明の病気でトランペットが吹けなくなり、心の拠り所を失った錠一郎(オダギリジョー)のもとにるいが駆けつけるシーンでは突然バックが“無音”になる。その無音演出により大切な人を失うかもしれないという事実に直面した時の安子やるいの衝撃や絶望感、それでも奇跡を手繰り寄せようと逸る気持ちが痛いほどに伝わってきた。るいが錠一郎の入水自殺を止める場面でもカメラに水しぶきがかかったのをあえて編集せず、臨場感をもたらすなど、1つ1つの演出に抜かりがない。何気ない優しい日常と、その中で時折起きるドラマとの鮮やかなコントラストが魅力だ。

『カムカムエヴリバディ』算太はなぜいつも笑う? 悲劇を喜劇に見せる濱田岳

『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第17週から、濱田岳演じる“謎の振付師”サンタ黒須が登場した。条映太奏映画村のCMに斬新な…

 濱田が演じた算太は同作の中でドラマをもたらす存在として機能していた。あちこちで借金を踏み倒し、父である金太(甲本雅裕)に勘当され、戦後は安子とともに実家の和菓子屋を立て直そうとするも、失恋の後に開業資金を持ち逃げ……。いわゆる朝ドラお馴染みのトラブルメーカーだが、不思議と憎めないキャラクターだった。どんな状況下でもユーモアを忘れず、周囲を笑わせようとする優しさ。また、そういう道化師のような役回りに誇りを持ちながらも、ときに滑稽にも思える算太の苦悩を濱田は色濃く映し出した。その集大成としてサンタクロースの衣装でダンスを披露した場面は朝ドラ史上に残る名シーンと言えるだろう。

 濱田も安達をはじめとした制作スタッフたちも、藤本有紀が誇る抜群の構成力とキャラクター造形を最大限に引き出していたように思う。彼らが新進気鋭の脚本家・坪田文が書き下ろした物語をどう演出していくのか楽しみだ。なお、本作には『カムカム』で“モモケン”こと、桃山剣之介を演じた尾上菊之助や、ジャズ喫茶のマスターである木暮を演じた近藤芳正も出演する。

 また太郎と対立する新聞記者・梅澤役の森本慎太郎は、『カムカム』で稔役を演じた松村北斗と同じくSixTONESのメンバー。11月6日に行われた同作のイベント「ドラマ制作の舞台裏~ #カムカムエヴリバディ1周年 制作陣が語ります〜」にて、制作統括の櫻井は松村に招待されたSixTONESのコンサートで森本に出会い、梅澤役に起用したことを明かしている。そんな多くの縁が繋がり、実現したドラマ『探偵ロマンス』に今から期待しかない。

■放送情報
土曜ドラマ『探偵ロマンス』
NHK総合にて、2023年1月21日(土)スタート 毎週土曜22:00~22:49放送 【全4話】
出演:濱田岳、石橋静河、泉澤祐希、森本慎太郎、世古口凌、本上まなみ、浅香航大、松本若菜、近藤芳正、大友康平、岸部一徳、尾上菊之助、草刈正雄ほか
脚本:坪田文
音楽・主題歌:大橋トリオ
制作統括:櫻井賢
プロデューサー:葛西勇也
演出:安達もじり、大嶋慧介
撮影場所:京都東映撮影所、関西近郊ロケほか
写真提供=NHK

関連記事