『舞いあがれ!』福原遥の涙に詰まった“全員主役”のバードマン 圧巻だった10分のフライト

 『舞いあがれ!』(NHK総合)第28話では、女性パイロットの世界記録15.44キロを超えることを目指して、舞(福原遥)を乗せたスワン号が空へと飛び立った。舞を送り出した鶴田(足立英)らは陸で、刈谷(高杉真宙)と由良(吉谷彩子)は船から声をあげ、舞を応援する。部員たちの思いを乗せ、舞はスワン号のプロペラを回し続ける。

 第28話では、スワン号内部でペダルを漕ぎ続ける舞の姿が映し出されるのだが、人力飛行機のコックピック特有の閉塞感が、練習とは異なる雰囲気にのまれていく舞の不安や焦りを引き立たせていた。

 序盤では、舞はトレーニングの成果を発揮し、落ち着いた様子で順調に足を動かし続ける。舞は空を飛んでいることへの感動がこみ上げてきたようで、辺りを見渡すと「空、飛んでる」と嬉しそうにつぶやく。しかし1kmを過ぎたあたりから徐々に雲行きが怪しくなる。舞自身は「1キロ……まだや! まだキロ!」とやる気にみなぎっているが、風やコックピット内にこもる熱の影響が、舞の体力を奪っていく。舞はつらい表情を浮かべても、前へ前へ進もうとする意志を失うことはない。しかし舞が「暑い……」と口にしたとき、その言葉が意図せず発せられたように見え、緊張が走った。舞の意志とは関係なく、体力、気力の限界が近づいているのだ。刈谷と由良の激励に応える舞だが、その表情は明らかに疲労が蓄積している。2km通過したあたりで無線が途切れてしまった。狭いコックピット内で舞の心を支えていた刈谷と由良の声が届かなくなり、舞の表情に強い不安が浮かぶ。

 それでも舞は前へ進むことを諦めなかった。パイロットである舞を気遣い、風が通るようにコックピットの改良を提案した日下部(森田大鼓)と藤谷(山形匠)を筆頭に、思いを込めてスワン号を作り上げてきた「なにわバードマン」の部員たちの姿を思い浮かべながら、舞はスワン号と自分自身に言い聞かせるように「飛んで……」と願う。

「みんなの夢背負ってんねん。こんなとこで終わられへん」
「終わられへんのに……」

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