『オリバーな犬』は第2の『濱マイク』か? オダギリジョーの奇想が爆発したシーズン2
「だいたい事件が解決される時ってのはそんな感じなんだよ。いろんな情報が自然と犯人の方を向く」(溝口)
だが、そこに主役はいなかった。
『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK総合)第6話。トントン牧場のオーナー神々𢌞(橋爪功)が、北條かすみ(玉城ティナ)の失踪と関東明神会若頭・龍門(松重豊)殺害、花村寧々(関川ゆか)の薬物使用疑惑に関与していることが判明。一平(池松壮亮)はスーパーボランティアの小西(佐藤浩市)を発見するが、オリバー(オダギリジョー)はその場に取り残され、オリバーを救出するため、一平と漆原(麻生久美子)、小西、溝口(永瀬正敏)は神々𢌞の元へ向かう。トントン牧場の舞台に警察と関係者、疑惑の主が集まり、全ての真相が明かされるかに見えた。
冒頭のセリフは、フリーライターの溝口があやめ(浜辺美波)との通話で発したもの。続くモノローグで、溝口は後日マイクと名乗って探偵事務所を開くと独白。『オリバーな犬』と『私立探偵 濱マイク』(日本テレビ系)の類似はこれまでにも示唆されてきた。溝口を演じるのが永瀬正敏であることや、マイクと同じ横浜・黄金町に住んでいる設定がファン心理をくすぐったが、第6話ではより直接的な形で参照。溝口が主題歌だったEGO-WRAPPIN'の「くちばしにチェリー」を口ずさむなど、よりストレートに『濱マイク』愛を表明した。
『オリバーな犬』の永瀬や村上淳、柄本明、國村隼に『濱マイク』出演歴があり、主題歌がEGO-WRAPPIN'、ついでに音楽も森雅樹(EGO-WRAPPIN')と重なる上、次世代にもバトンは受け継がれている。村上虹郎、佐藤緋美、松田龍平、松田翔太は親世代が『濱マイク』に出演しているが、こういったわかりやすいつながり以上に、『オリバーな犬』は『濱マイク』のエッセンスを受け継いでいる。
林海象原作の『濱マイク』は、全12話を別の脚本家と監督が担当し、殺伐とした世相にあって大文字の正義ではない裏通りの人間模様を描いた。作り手の作家性が投影された各話はショートフィルムのようで、永瀬や村上、浅野忠信らカルチャーの先端を走る役者の存在と相まって若い世代の支持を集めた。