『ONE PIECE』から『名探偵コナン』まで 視聴者の成長に合わせて“変化”するご長寿アニメ

 次に『ドラえもん』と『名探偵コナン』に共通する魅力は、平和な日常生活の中に非現実的な要素が含まれることだ。『ドラえもん』では、ドラえもんの存在自体もそうだが、どんなことも叶えられる様々な秘密道具が存在する。“スーパーパワー”を自分自身の能力として持つのではなく、“スーパーパワー”的な機能を持つ道具を使う。

 一方、『名探偵コナン』では、必ず事件が起きて、それに巻き込まれる、ある意味物騒な世界だ。血を黒く描く、怖さを感じない演出は子供向けだが、大人でもわからない本格的なトリックと、犯人を真っ黒に描くことで性別も身長も謎が解明されるまでわからなくなっている工夫は大人を飽きさせない。登下校シーン、放課後に遊ぶシーンなどの日常的な場面は、私生活の中でもありえそうな現実味があるが、秘密道具の存在や、どこに行っても危ない事件に遭遇するというスリリングな状況は非現実的で、アニメならではのワクワク、ドキドキする表現が魅力的だ。また毎年のように映画が公開され、子供の成長に合わせて大人が観に行けるというのも、大人が我が子と重ねて楽しむことができる要素となっている。

 最後に『ちびまる子ちゃん』と『サザエさん』に共通する魅力は、これまで挙げてきた作品とは違い、特殊な力が出てくるわけでも、(トラブルは多いが)危険なことに巻き込まれることがあるわけでもなく、何気ない日常の中でドタバタで楽しい大家族の愛と絆が描かれる点にある。原作が『ちびまる子ちゃん』は1970年代、『サザエさん』は1950年代から1970年代の日本がそれぞれ舞台となっているため、当時を思い出す人もいれば、祖父母の家のような落ち着く雰囲気を感じ、観ていてどこか懐かしい気持ちになる。まる子やカツオたちのキャラが濃いクラスメイトや給食のメニューは、「こんな子いた!」「この給食好きだったな」と自身の小学校時代と重なる人も多いだろう。

 また、『ちびまる子ちゃん』と『サザエさん』は連なって放送がされており、18時から19時までの放送時間がちょうど夕食の時間に重なっているため、家族団欒をしながら観ることができる。キャラクターたちが大家族だからこそ、視聴者の家庭の中の子供たちや親世代も、必ずさくら家、磯野家のそれぞれと共通する部分があり、ついつい見入ってしまう魅力がある。

 ご長寿アニメには、キャラクター面では“スーパーパワー”や誰かのために立ち向かう精神的なパワーなどのかっこいい姿が描かれ、内容では友情、愛情などの絆やギャグ要素、子供には理解できなくても大人にとっては胸を打たれる感動的な内容など「大人も楽しめる」工夫がされているという共通点がある。そして、キャラクターたちはかっこいい憧れの存在から尊敬する存在へと変化し、自身の成長に応じて見方や価値観にも変化が生まれる。そのことこそが「ご長寿アニメ」に引き込まれる魅力であり、長年愛される秘訣へと繋がっているのではないだろうか。

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