『3つの鍵』と『靴ひものロンド』をハシゴしよう イタリアの巨匠が描く“家”の崩壊と解放
もし、これを読んでいるあなたが今週末に時間があるようなら、ぜひ『3つの鍵』とハシゴしてほしい映画があります。それが、9月9日に公開された『靴ひものロンド』です。
『3つの鍵』と『靴ひものロンド』はどちらもイタリアが舞台。監督こそ違いますが、両作ともアルバ・ロルヴァケルが「留守がちの夫を持ち、子どもの面倒を1人で見る妻」という役どころで出演しているのです。
この2作を立て続けに観ると、まるで彼女が「とある選択をした未来」と「しなかった未来」のパラレルワールドを覗き見たような感覚になります。
筆者には、イタリアの人は家庭を何よりも大切にする、家族至上主義のようなイメージがありましたが、『3つの鍵』のナンニ・モレッティ監督によれば、「実は多くのイタリア人は非常に個人主義的」なのだそうです(※)。そしてそれを象徴するように、2つの映画に共通するのは、“家”からの解放を祝福するクライマックスです。
モレッティ監督が「ここで描かれているのはまさに現代の社会傾向そのものです」と語るように、コロナ禍を経験してもう一度“家族”や“地域”という共同体と向き合うことになったすべての人にとって、この2作が示す崩壊と解放は、苦いけれどよく効く良薬になってくれるのではないでしょうか。
参照
※ https://bunshun.jp/articles/-/57268
■公開情報
『3つの鍵』
全国公開中
監督:ナンニ・モレッティ
原作:エシュコル・ネヴォ
脚本:ナンニ・モレッティ、フェデリカ・ポントレモーリ、ヴァリア・サンテッラ
出演:マルゲリータ・ブイ、リッカルド・スカマルチョ、アルバ・ロルヴァケル、ナンニ・モレッティ
配給:チャイルド・フィルム
後援:イタリア大使館
特別協力:イタリア文化会館
2021年/119分/イタリア・フランス/ヴィスタサイズ/原題:Tre piani/字幕翻訳:関口英子/R15+
©2021 Sacher Film Fandango Le Pacte
公式サイト:https://child-film.com/3keys/