『ちむどんどん』川平家三代出演に感じたNHKの底力 最終幕にやってきた物語のピーク
朝ドラは半年間の長いドラマなので、作るほうーーとりわけ作家にとってはマラソンのようだとも言われる。短距離の繰り返しという説もあるが、いずれにしてもヘヴィだ。物語のなかで主人公の願望成就(結婚や仕事の成功)が半ばの盛り上がりに来ると、後半が間が保たなくなっていくことも少なくない。それを息切れというのだが、『ちむどんどん』は終わりに、ピークを設定し、いい話でまとめるようだ。繰り返すが、終わりよければ……で人はその前のことを忘れてしまう(もちろん忘れない人もいるが)。
朝ドラは『ちむどんどん』に限らず、この終わりよければ作戦で、懇親のアイデアを持ってくることがある。最近だと、『おちょやん』。主人公・千代(杉咲花)が前半、悲しい目に遭い続けるが、終盤になってようやく人生が上向いてきてほっとしたものだ。これは物語上のことで、アイデア勝負だったのは、『エール』。クライマックスは主人公を長年支えた妻が亡くなる悲しい展開で、でもそれを最終回の一話前に描き、最終回は出演俳優たちによるショー形式で明るく終わった。また、『わろてんか』は半年間全体的に跳ねない印象だったが、最後、登場人物たちが上演する劇の体(てい)でこれまでの振り返りを見せることで、しゃんしゃんと手打ちの儀式のように見えた。この辺りのことは拙著『ネットと朝ドラ』でもネットの格好のネタとして取り上げている。
劇やショーは問答無用に楽しい。もっともこのグランドフィナーレ風は、音楽や演劇を題材にしたものだからすんなりと見ることができた。このやり方の傑作としては『てるてる家族』を超えるものはないと筆者は考える。序盤からミュージカル場面を積み重ねてきた結果の出演者たちによるグランドフィナーレにはこのうえない多幸感があった。
『ちむどんどん』のこれからはもういいことしかないような気がするが、どんなふうにフィナーレを迎えるだろうか。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK