『モブサイコ100』人気を支える霊幻の魅力 『エヴァンゲリオン』との対比で紐解く

 「ボンズ」制作のTVアニメ『モブサイコ100 Ⅲ』が10月5日から放送される。本作は『ワンパンマン』の作者・ONEの同名漫画を原作に、強力な念動力が使える超能力者の影山茂夫、通称「モブ」の日常や非日常が描かれる作品だ。

 本作の主人公である中学2年生のモブは類稀なる超能力者であり、アニメ第2期の時点では「世界最強の超能力者なのでは」と言われている。しかし、超能力をコントロールできず弟を傷付けてしまった過去や、人付き合いが苦手で自己肯定感が低いことなどが重なり、自分が超能力を使うことに否定的だ。そのため超能力は必要がないと考えており、学校生活や対人関係の中で自身のアイデンティティを確立しようと奮闘している。

 自身の能力がそのままアイデンティティとして受け入れられない主人公は、TVアニメ版『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)の碇シンジも同じだった。シンジはエヴァとのシンクロ率が他のパイロットと比べ群を抜いて高く、その才能は周りのキャラクターからも認められている。しかしモブと同じく対人関係に難があり、また父とのコミュニケーションエラーも相まってエヴァに乗ることや自分がパイロットとしてしか求められていないことをよく思っていない。作中ではエヴァに乗れることを自身のアイデンティティとする登場人物から疎まれる場面もあるが、モブサイコでもモブの能力に憧れ嫉妬するキャラクターが登場する。シンジとモブは、周りから妬まれるほどの才能を持っていながらも、それを自身のアイデンティティとして受け入れられない要因がある点で似通った主人公象を持っているのだ。

 『エヴァ』のシンジと本作のモブは共通点が多いように感じるが、両作の決定的な違いは“子どもに対し大人としての対応ができる大人”と“主人公に対し下心のない友人関係を築く友人”の存在の有無だ。本作ではモブに対し大人として振る舞うキャラクターと、同じ超能力を持ち友人として、そしてライバルとして交友関係を築くキャラクターが登場する。特に霊幻新隆というインチキ霊能力者はモブにとって重要な存在だ。霊幻は自称・霊能力者の一般人だが、「霊とか相談所」という会社を立ち上げ、日々霊に関係する(時に全く関係のない)依頼を解決している。小学生だったモブが霊幻を同じ超能力者であると勘違いして相談に来たことをきっかけに師弟関係となるが、霊幻はいつでもモブの気持ちや感じ方を第一としているのだ。

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