『ちむどんどん』矢作が料理人として再起する道は? 待ち受けるのは厳しい現実

 『ちむどんどん』(NHK総合)第108話、暢子(黒島結菜)は思うように客が入らない店を一旦休み、矢作(井之脇海)とともに店の味やメニューを見直すことにした。和彦(宮沢氷魚)は海外出張から帰国した「アッラ・フォンターナ」のオーナー・房子(原田美枝子)から暢子へ何か助言をしてほしいと考え、食事会を企画する。

 和彦が二ツ橋(髙嶋政伸)や田良島(山中崇)とともに企画した食事会に、賢秀(竜星涼)と寛大(中原丈雄)が訪問したことで、話が思わぬ方向へと進んでいく。だが寛大の口から語られたハワイの養豚業を支えてきた沖縄移民の話は感慨深く感じられた。中原の深い語り口からは、寛大の養豚業への誇りと愛情が伝わってくる。

 そしてもう1人、二ツ橋の計らいでやってきた矢作にも注目したい。物語冒頭では、暢子とともに厨房に立ち、料理の見直しをする矢作の姿があった。暢子の横に立つ矢作に、以前のような張り詰めた空気は流れていない。矢作の佇まいには料理の改良に目を向けるひたむきさが感じられた。しかし、彼が過去に犯した過ちを許せない人もいる。食事会にやってきた矢作をかつての同僚は目の敵にし、裏面が焼け焦げた料理を提供する嫌がらせをした。気まずそうな表情で席に座る矢作が嫌がらせに気づき、顔を上げると、同僚が嘲笑する。嘲笑された後、矢作は居心地悪そうに目を伏せた。その様子が映し出されたのはわずかだったが、その様子を心配そうに見つめる二ツ橋の表情もあいまって、矢作の複雑な胸中が伝わってくる。

 食事会が終わると、二ツ橋は矢作に「ずっと見てましたよ」「今日はよくこらえましたね」と優しく声をかけた。二ツ橋は昔、レストランを開き、潰してしまった過去がある。苦い思い出を抱える二ツ橋だからこそ、フォンターナに身の置き場がない矢作に寄り添うことができる。矢作は二ツ橋を見据えると、敬意を払うように頭を下げた。過去に犯した出来事をなかったことにはできないが、二ツ橋の言葉は矢作の心を支えただけでなく、矢作が料理人として再起する道を照らすものに感じられた。

 矢作は二ツ橋の誘いを断り、出汁の確認をするため店に戻る。沖縄料理に真剣に向き合い、極めようとする矢作の姿は魅力的だ。けれど彼に待ち受けるのは厳しい現実だ。矢作は、暢子と和彦が「経営難で矢作に給料が払えない」「辞めてもらうしかない」と話しているのを聞いてしまう。店に戻らず、来た道を引き返す矢作が何を思ったのかは分からない。だが今や矢作は「ちむどんどん」にはなくてはならない料理人のはずだ。この現状を打破する展開を願いたい。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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