日曜劇場を支える榮倉奈々 『オールドルーキー』でも最大のサポーターに

 放送中の日曜劇場『オールドルーキー』(TBS系)にて、主人公のパートナーとして多彩な表情を見せている榮倉奈々。現役アスリートをサポートする「スポーツマネージメント」の仕事で奮闘する新町亮太郎(綾野剛)にとって、最大のサポーターだといえるだろう。

 榮倉が演じているのは、元人気アナウンサーの新町果奈子だ。元サッカー日本代表の亮太郎と結婚した彼女は専業主婦となり、ふたりの娘にも恵まれ、家族4人で満ち足りた日々を過ごしてきた。ところが、亮太郎がプロサッカー選手を引退せざるを得ない事態に。こうして彼はスポーツマネージメント会社「ビクトリー」で初めての社会人生活を送ることになり、悪戦苦闘を繰り広げ、果奈子はこれまで以上に亮太郎をサポートするようになった。主演の綾野が亮太郎のネガティブな内面を表現する振舞いをするたびに、それへの応答として見られる榮倉の語りかけが印象的だ。ときに厳しく、ときに優しく、グラデーションが豊かである。基本的に明るい新町夫婦だが、果奈子もまた亮太郎とともに変化を余儀なくされたのだ。

 しかし、得意の“お弁当づくり”がSNSを通じて広く話題となり、そのレシピを一冊にまとめたものを出版。「元人気アナウンサー」という肩書きも手伝ってか、果奈子は再び世間から注目を浴びている。表舞台を退けていた彼女だが、亮太郎の再起する姿に背中を押されたらしい。ちなみに現役時代の彼女がどれくらい人気だったのかというと、レシピ本を「ビクトリー」の社長(反町隆史)が10冊もまとめ買いしたり、亮太郎の同僚・深沢塔子(芳根京子)が果奈子の話題となると黄色い声を挙げたりすることから、相当な(異常な)ものだったことが分かる。いまの日本にそのような人間が存在するだろうか……などとつまらない考えを持つよりも、果奈子は私たち視聴者のリアリティを超越した存在なのだと受け入れるのが正解だろう。生活者となった亮太郎には人間離れした彼女の存在が必要だ。“セカンドキャリア”というものの困難をこれが暗に物語っているのだと解釈するのは、深読みが過ぎるだろうか……。「生涯現役」を掲げていた男が社会に揉まれなければならない苦しみは計り知れない。

 さて、そんな榮倉といえば「日曜劇場」の常連俳優だ。多くの方にとって『テセウスの船』(2020年)での好演が記憶に新しいのではないかと思う。死刑囚の父を救おうと奔走する主人公の母に扮し、特殊メイクによって老け込んだ姿までも演じ上げた。しかしそれ以上に、彼女の発する言葉や吐息の重さにこそ、このキャラクターが背負ってきた“人生”が垣間見えるものだった。さらに遡ると、映画化もされた『99.9-刑事専門弁護士-』の「SEASONⅠ」(2016年)ではヒロインを、『この世界の片隅に』(2018年)でも主要なポジションを担っていた。そして今作では、“主人公の一番の理解者”という役どころである。こうもコンスタントに「日曜劇場」に参加している事実に目を向けると、榮倉に対する制作サイドの信頼度や期待値の大きさが感じられるというものだし、実際に彼女がそれに応えているからこそ『オールドルーキー』があるのだろう。

 物語はいよいよクライマックスへ。新町家の母として、妻としての顔を演じ分けながら、榮倉はどのように「日曜劇場」の骨太な展開をサポートしていくのだろうか。“果奈子=榮倉奈々”の言動に触れるたび、誰にだって人生のサポーターがいるのだと痛感する。

■放送情報
日曜劇場『オールドルーキー』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:綾野剛、芳根京子、中川大志、岡崎紗絵、増田貴久、生田絵梨花、稲垣来泉、泉谷星奈、高橋克実、榮倉奈々、反町隆史
脚本:福田靖
演出:石井康晴
プロデュース:関川友理、松本明子
編成:東仲恵吾、高橋秀光
音楽:木村秀彬
主題歌:King Gnu「雨燦々」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
サッカー監修:大久保嘉人
料理監修:Mizuki
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/OLDROOKIE_tbs/
公式Twitter:@oldrookie_tbs
公式Instagram:oldrookie_tbs

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