『オールドルーキー』福山翔大がパラアスリート熱演 スポーツが紡ぐ純度の高い人間ドラマ

 『オールドルーキー』(TBS系)が8月14日に第7話を迎えた。スポーツマネジメントを仕事にすると、必然的にプロスポーツすべてに関わることになる。そこにはパラスポーツも含まれる。すっかり定着したように思われる障がい者スポーツだが、そこには今も多くの課題があった。

 第7話の中心になったのは、車いすテニス選手の吉木修二(福山翔大)。パリパラリンピック日本代表候補の吉木は世界を転戦中で、新たにスポンサーを探すためビクトリーとのマネジメント契約を希望していた。話を聞いた梅屋敷(増田貴久)は、吉木と契約を結ぶべきであると熱弁。梅屋敷が強く主張したのは個人的な理由もあった。

 近年、障がいをテーマにしたドラマが増えつつある。東京2020パラリンピック競技大会の影響とも思われるが、『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(日本テレビ系)や連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)では、視覚障害を持つ主人公や車いすマラソンのパラリンピック代表を目指す選手が登場した。身体障害のほかに、『僕の大好きな妻!』(東海テレビ・フジテレビ系)では発達障害に向き合う夫婦の姿が描かれた。

 障がいも個性であり、多様性が尊重される時代にその人らしい生き方を志向することは広く認められるべきだ。しかし、様々なバリアが解消された後でも、当事者は日々見えない壁を感じている。吉木もその一人だった。障がい者スポーツへの支援を「ボランティア」と言ってはばからない勤務先の上司。健常者と違って障がい者スポーツはセカンドキャリアを築きにくいこと。最高のパフォーマンスを発揮するため、車いすの提供元の企業を乗り換えることもある。障がい者スポーツでプロとして生きるには、ある意味で健常者以上の高い意識が求められる。「次の大会で負けたら、人生終わり」と話す吉木は、極限の精神状態で日々を戦っていた。

 梅屋敷が吉木との契約にこだわる理由は、姪の桜(池端杏慈)にあった。中学1年の秋に車いす生活となり、ふさぎ込んでいた桜を梅屋敷は心配していた。梅屋敷が「障がいを持つ子どもたちの人生を変えることができる」と話していたのは、桜のことだった。梅屋敷は、テニス部だった桜に車いすテニスに関心を持ってもらおうとするが、桜の表情は硬かった。

 壁を築いていたのは、こちら側だったかもしれない。新町(綾野剛)や塔子(芳根京子)、梅屋敷は、気づかない間に吉木や桜をかわいそうと思っていた。相手のことを思っているようでそこには大きな隔たりがあり、かえって吉木や桜を追い詰めていた。そのことに気付かせたのは社長の高柳(反町隆史)で、「吉木くん君がパラアスリートだという概念を捨てろ」と障がいのあるなしにかかわらず、選手へのリスペクトを徹底させる。それによって、新町たちは、スポーツ本来の魅力と選手の挑戦を伝えるようになり、見事にスポンサーを獲得。心を閉ざしていた桜も、目の前で車いすテニスを観戦したことで、変化の兆しが生じはじめた。

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