『石子と羽男』の“してやられた”感が心地良い 新井順子P×塚原あゆ子監督作品の真骨頂

 どこか不器用な弟の羽男だが発破をかけることで、きっと一奈が救護義務を果たしていたという確固たる証拠を掴んでくると信じていたのだろう。見事その期待に応えて見せた羽男と石子。裁判は弟に舌打ちをさせられる形にはなったものの、カジノグループの一斉摘発、新庄の逮捕と結果的には優乃の狙い通りに事が進んだ。そんな優乃の目論見にまんまとハマった石子だが、そのクールなやり口にニヤリとせずにはいられない。

 石子が口角を上げて優乃を見つめたとき、きっと多くの視聴者も同じような表情を浮かべていたに違いない。なぜなら優乃と石子の構図は、そのまま新井順子プロデューサー×塚原あゆ子監督と視聴者との関係性に似ているような気がするからだ。

 今年4月、道路交通法の改正案が可決され、16歳以上なら免許不要、ヘルメット着用も任意で利用できるようになる電動キックボード。より身近になる一方で、事故が増えていくのではと懸念される乗り物について取り上げてくるあたりも、テレビドラマならではのスピード感でいつも時事ネタに挑んできた新井順子プロデュース×塚原あゆ子演出作品の真骨頂と言える。

 エンタメとして楽しんでもらうのはもちろんのこと、その先にある視聴者の実生活が少しでもプラスになる作品になってほしい。そんな彼女たちの目論見に私たちはまんまとハマっている。その“してやられた”感が毎回とても心地良い。「やはりすべてあなたたちの……」いや、きっと彼女たちも優乃のように「ちょっと待って待って。なになになになに? ここ法廷なの? 私たち尋問されてるの?」なんておどけて、その先の言葉を遮ってくるかもしれない。みなまで言わず、このまま気持ちよく踊らされようではないか。

■放送情報
金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:有村架純、中村倫也、赤楚衛二、おいでやす小田、さだまさし
脚本:西田征史
演出:塚原あゆ子、山本剛義
プロデュース:新井順子
編成:中西真央、松岡洋太
音楽:得田真裕
主題歌:「人間ごっこ」RADWIMPS(Muzinto Records / EMI)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/
公式Twitter:@ishihane_tbs
公式Instagram:@ishiko.to.haneo_tbs

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